医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHM)は8日、大阪府茨木市の同研究所で、2回目となる報道関係者向け勉強会を開催した。初回は7月27日に開かれており、4月に理事長に就任した中村祐輔氏の「メディアを通じてNIBIOHMの研究動向を発信し、知名度を得たい」との戦略に基づいている。この日も中村理事長は冒頭あいさつで、同様主旨のコメントを繰り返した。


〇薬用植物エキス分譲で複数の共同研究


 この日はNIBIOHM内の5つの研究センター関係者から、それぞれの専門研究分野の内容と進捗状況がプレゼンテーションされた。


 研究者自体が極端に少ないとされる薬用植物・生薬・漢方薬に関する課題と研究動向に関しては、吉松嘉代・薬用植物資源研究センター長が、創薬候補となる薬用植物の探索支援と産地の育成をテーマに話した。吉松氏は、原料生薬の確保の課題について、種苗の供給体制が未整備なこと、農家の高齢化、機械化などの技術基盤進歩の遅さなどを挙げながら、生産者と製薬企業など実需者のマッチング機会の充実などの方策検討を示した。


 また、同センターが進める植物エキスライブラリーでは1万点以上が保管管理されているとの現況を報告。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)などと共同で進める変形性膝関節症の治療薬探索をはじめ、抗エンテロウイルス化合物(国立感染症研究所と共同研究)、抗C型肝炎ウイルス化合物(神戸大学)、薬剤耐性結核菌に対する新規抗菌薬(順天堂大学)の探索を進めていることなどを明らかにした。さらに、ライブラリーからの分譲実績は対企業では16件、7万8879点に上っている。


〇NIBIOHM発エイズ治療ワクチンに世界が待望


 霊長類医科学研究センター長の保富康弘氏は、「NIBIOHM発エイズ治療・予防ワクチンの開発」をテーマに、NIBIOHMがエイズ治療薬ワクチン研究で、世界を一歩リードしている状況を明らかにした。昨年に実験結果が報道されたこともあり、世界中のエイズ患者から治験参加を求める声が集まっていることも明かした。


 保富氏は、実験用霊長類(サル)の輸入難など確保環境、エイズの現状、薬物治療の現状を説明したうえで、同センターが開発したSHIV-Ag85Bワクチンのサルでの試験結果(昨年8月8日に一部公表)などを詳しく報告。そのうえでサル試験段階ではSHIV-Ag85Bが治療用ワクチンとしてエイズの根治治療法として有望な結果を示しつつあるとした。今後は霊長類実験によるプロトコールの作成、迅速な個別ワクチンの作製法確立、流行株の同定、流行株によるワクチンの作製――をなるべく早く進め、臨床治験の開始に漕ぎ着けたいとの意欲を強調した。