新型コロナウイルス感染症の第7派は、ピーク時、1日あたり3万人を超えていた東京都の感染者も5000人を割り込み(2022年10月10日現在)、終息に向かいつつある。
新型コロナ対策の切り札として登場した新型コロナワクチン。現在、4回目の接種が始まっており、3557万回の接種が完了している(10月7日現在)。
ワクチンが登場した当初、いくつか疑念があった。①なぜ、こんなに早くできるのか、②安全性に・有効性に問題はないか、③供給体制をどう作るのか……。接種が始まってからは、④案外、接種後の死亡者が多いのではないか、そして今は、⑤リスクを上回る効果はあったのかという点が関心事である。
これらのうち、①なぜ、こんなに早くできるのか、③供給体制はどう作るのか、に関しては以前紹介した『mRNAワクチンの衝撃』『Moonshot(ムーンショット)』につづられている。残る疑問を解決するヒントを得るため、手に取ったのが、『コロナワクチン 失敗の本質』である。
集団免疫、重症化予防効果、抗体価、mRNAワクチンのリスク、ワクチン後遺症……さまざま観点から「失敗の本質」を論じていく。
単なるワクチン忌避本ではない。どう評価するかは読者次第だが、データやファクトをもとに論じられており、情報やデータがなく、わからない部分はわからないとしている。
あらためて驚いたのが、ワクチン接種後に「重篤」「死亡」となった人の数。ワクチンとの因果関係は不明だが、最新の数字だと死亡者の数は1800人を超えている。「重篤」も7000人を超えていて、通常ならマスコミが大騒ぎして検証が始まるのに十分な数値だ。
■“何度でもかかる”は教科書レベルの話
3回目、4回目のワクチン接種にうんざりしている者も少なくないが、当初は2回接種で集団免疫ができると信じられていた。しかし、研究者たちはワクチン接種による集団免疫に懐疑的だったという。
〈ヒトコロナウイルスには感染後時間が経てば、何度でもかかるというのは教科書レベルの話で、ウイルス研究者にとってはコンセンサスだった〉からだ。教科書レベルの話がなぜ伝わらなかったのか? きちんと調べなかったマスコミにも責任の一端はある。
超過死亡の数値も気になるところ。〈ワクチン接種が行われた2021年は前年(2020年)に比べ、日本全体の死者が約6万7054人も増加、1年間で約144万人という過去最高の死亡者数〉を記録した。
高齢化率や統計に上がっていなくてもコロナで亡くなる人もいたことを考えれば、数値だけを見て必ずしもワクチンとの因果関係はあるとは言えない。
しかし、〈3回目、4回目の接種にまで突き進んだイスラエルの超過死亡がひどいことになっていました〉〈イギリス、とくにスコットランドも心疾患や脳血管疾患の死亡者がすごく増えた〉といった現象も生じている。ワクチンと超過死亡の関係は、きちんと調査しておく必要がある。
第二章では、医師、アカデミア、製薬業界、監督官庁などを舞台に、失敗を招いた背景を描いている。
〈研究費が付く分野に研究者たちは群がる〉、独法化した〈国立大学の窮状〉、〈研究のメインストリームがコロコロ変わる。そのたびに研究者がどっと流れていく〉といったエピソードは医療に限った話ではないが、〈研究者として脂がのっている30代、40代に安心して研究に取り組めるようアカデミズムの構造を変えていかなくてはならない〉のは現場の切実な気持ちだろう。
第7波が終息しつつあるとはいえ、次に強毒化したり、感染力の強い変異株がやって着ないとは限らない。良し悪しは別にしても、国のワクチン推奨は当面続くだろう。
著者が指摘するように〈ワクチンにはいいところもありますが、どうしても悪いところもある。悪いところがあるならそれを改善して、なくしていかなくてはいけない。だから、悪いところの議論もするべき〉である。
〈この世のものでないタイプのmRNAを体内に入れたときどうなるかなんて、私たち人間にはわかりっこない〉。影響は20~30年スパンにおよぶ恐れもあり、今からでも、著者が提唱する安全性や有効性を評価する登録制度を作ったり、接種者と非接種者の死亡率を比較するような調査を行うべきではないだろうか。結局のところ、冒頭の⑤リスクを上回る効果はあったのか、“うちっぱなし”では評価できないはずだ。(鎌)
<書籍データ>
宮沢孝幸、鳥集徹著(宝島新書990円)