サンデー毎日に載った4本の政治記事を読み、頭がグルグル回っている。興奮でもなければ怒りとも少し違う。この国は一体どこに向かい漂ってゆくのか。そう呟きたくなるような途方に暮れる思いである。


 まずタイトルを列挙しておこう。4本中3本はフリージャーナリストの署名記事。1本目は鮫島浩氏の『消費税増税 自公立維「与ゆ党体制」現出か 野田佳彦首班で大連立構想が浮上!』、2本目は鈴木哲夫氏の『岸田首相vs.河野デジタル担当相 壮絶バトルの行方』、3本目は森健氏が始めた人物ルポ新シリーズ『セカンドステージ』の初回記事『元衆院議員佐藤健一郎 政界の“サラブレッド”がたどり着いた「食と農」』。そして4本目が、毎日新聞専門編集委員・倉重篤郎氏の『ニュース最前線』にある『小沢一郎かく語りき 「私の日本改造プラン」』。そんなラインアップである。


 鮫島氏の記事によれば、現在の国会では「静かなる地殻変動」が起きていて、岸田政権が支持率低下に苦しむなか自民党最大派閥の清話会も安倍氏を失って息絶え絶え、そこに野党としてやはり低支持率に悩む立憲が維新と連携して「ゆ党」となり急接近。こうして旧統一教会問題にまつわる4党協議の場ができたのだが、鮫島氏はこの動きの先に、4党が大連立して野田佳彦氏を担ぎ、「消費税増税内閣」を立ち上げる可能性があると言う。岸田派と麻生派の「大宏池会構想」で官僚主導の政治を復活させ、清話会主導の新自由主義に代わる分配重視の政策に切り替える。そのためには岸田・麻生派では数が足らず、野田氏を中心に立憲を抱き込む必要がある、という理屈らしい。


 鈴木氏の記事では、現在の閣内で河野太郎氏が独自の動きをして旧統一教会問題で踏み込んだ対策の方向性を示したため、岸田政権はこれに引きずられる格好となり、さらには年金制度改革で河野氏がいずれ「反官僚主義」の立場から岸田政権に真っ向から立ち向かう局面が出てくるであろうと予測する。


 森氏の記事は、すでに政界からリタイアした佐藤氏の「生き方」に焦点を当てた内容だが、ここで目を引くのは、自民党を出て新党さきがけをつくり、細川護熙政権の樹立に関わった佐藤氏が、新生党の小沢一郎氏とさきがけの武村正義の「メンツ争い」で政権が瓦解するプロセスを見て嫌気がさし、さきがけを離党したと回顧するくだりだ。


 そして4本目の小沢氏インタビュー。これを読むと、彼が指摘する自民党批判はみなもっともだが、佐藤氏が述懐した小沢氏本人の「メンツ争い」のことを考えると複雑な気分になる。個人的な印象では、民主党政権への幻滅もとどのつまり菅直人政権下で権力奪取に執着した小沢氏らの「内ゲバ闘争」が、最大の原因であったように思う。


 このところ政治について思うのは、どの国でもいつの時代でも、ごくごく少数の例外を別にすれば、政治家は自らの権力奪取とその維持を常に考えて動くものであり、どれほどきれいごとを語ろうとも、あらゆる政策判断はその妨げにならない範囲でしか行わないということだ。政治家個々人の権力への執着が、結局は何物にも優先する。さもなければ、30年以上もの失政で国の没落がこれほど明白になったのに、何ひとつ有効な手を打たない政治を説明しようがない。この国は一体どこに向かって漂うのか。改めて思いはそこへ向かう。権力闘争で頭がいっぱいの政治家には、そんなことを考えるヒマはないのだろうけれども……。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)、『国権と島と涙』(朝日新聞出版)など。最新刊に、沖縄移民120年の歴史を追った『還流する魂: 世界のウチナーンチュ120年の物語』(岩波書店)がある。