大阪公立大学(辰巳砂昌弘学長)と量子科学技術研究開発機構(QST、平野俊夫理事長)は5日、包括連携協定を結んだ。生命科学のうち主として認知症研究での実態的な研究連携を図る。大公大が研究機関との包括連携協定を結ぶのは、大阪市立大と大阪府立大による今年4月の合併後では初めて。
QSTは2016年4月に放射線医学研究所と日本原子力開発研究機構の医学研究部門が統合されて発足した国立研究開発法人。他機関との研究開発連携は16年に大阪大学と協定を交わし、今回の大公大が16番目となる。
辰巳砂・大公大学長(左)と平野QST理事長
5日の協定締結後に会見したQSTの平野理事長は、16年に理事長トップダウンで策定した第1期中長期計画に続き、今年「QST未来戦略2022」を新たに策定し、その一環として量子生命科学分野を開拓し、国から量子技術イノベーション拠点に指定されていることを強調。そのパイロット戦略として「量子生命研究所」が創設されたことを説明した。
具体的には「がん死ゼロ、認知症ゼロの健康長寿社会の実現」を目指し、普及型小型重粒子線がん治療装置である量子メス開発、標的アイソトープがん治療、認知症PET診断薬、同治療薬の開発を推進する。
QSTは認知症解明研究を最重点としており、20年には研究機関連携による認知症バイオマーカーの評価・研究組織MABB(Multicenter Alliance for Brain Biomarkers)を構築、現在は20機関が参加して、微量タウなどのデジタルイライザ画像を活用(tau PET)したデータ集積を行っている。
大公大はMABBでの共同連携研究に参画し、医療統計、データサイエンス、人工知能解析等のほか、研究者の相互交流も視野に入れる。また辰巳砂学長は会見で、産学連携・学学連携のハブとして機能することへの期待も示したほか、25年に開設予定の健康長寿医科学研究センター(仮称)も、QSTと連携する方針も明らかにした。