大阪府、医薬基盤・健康・栄養研究所、関西医薬品協会などが主催する「彩都産学官連携フォーラム」が18日、大阪・千里で開かれた。


 フォーラムでは、新型コロナウイルスのパンデミックに伴って、日本の医薬品開発基盤が問われているとの認識がさらに強まっているとの空気が支配するなか、彩都に本拠を置くベンチャー企業が米国優先の開発マインドを明らかにした。


「健康医療へサイエンスを社会実装に導いた軌跡」をテーマに特別講演した基盤研の中村祐輔理事長は、軌道に乗った医療用AIプラットフォームについて、「(20年6月に)日本医師会がAIホスピタル推進センターを設置して体制ができた」ことを強調。医療現場は情報がオーバーフローしており、これを整理・支援する体制が整いつつあるとしたものの、「まだ芽を作ることができた段階」との認識も示した。また、ゲノム情報に基づくデータベース医療、個別化医療の国内における展開は遅いとして、「障壁は政府がゲノムに関するリテラシーがないことだ」との指摘も加えた。


 政府・行政の医薬品創出に対する政策を報告した荒木裕人・厚生労働省研究開発政策課長は、研究開発の流れに応じた環境整備を実施してきた、コロナパンデミックを踏まえ、ワクチン分野では一元的な研究開発の推進をスタートさせた、改定創薬ビジョン、経済安全保障、スタートアップ支援(SBIR)などの動きは医薬品開発をこれまで以上に官民で取り組む必要性を認識したものだとした。なかでは、22年度補正予算がついたSBIRフェーズ3の新設などを解説。とくに欧米型の医薬品開発基盤で後れをとる「ベンチャー企業育成」に対しての取り組みに理解を求めた。


●大学発ベンチャーは米国市場を優先


 一方で、眼科領域での難治性疾患である網膜動脈閉塞症(RAO)の治療薬KUS121を開発している株式会社京都創薬の前CEO、武蔵国弘氏は、医師主導治験でフェーズ1、2まで進んだ経緯などを報告。昨年5月にFDAからオーファン指定を取得し、すでに治験用製剤も準備していることを明らかにした。


 武蔵氏はFDAでの開発を優先したことについて、PMDAにも相談した経緯があることを明かしつつ、両国のオーファン指定対応は大きく違い、国内機関の臨床試験要求は重たいものが必要になったとして、早い段階から米市場リサーチに入ったことも明らかにした。


 リサーチでは米国の年間患者数2万8876人(日本は約7000人)、治療法がないためニーズが高いことがオーファン指定につながった模様で、同氏は1回治療薬価4万5000ドルを見込み、米市場売上は9億7400万ドルが見込めるともした。米国での発売は27年を目指すが、同社自体は今後の開発も含めて大手企業との連携を進める方針。販売戦略に関しては、当面はマイルストーン獲得で進める方針を示した。


 京都創薬は京都市で創業したが、現在の本拠は大阪の彩都。KUSについては、RAOが「眼の心筋梗塞」ともされる機序があることから、冠動脈疾患への展開も目指すとした。