1月8日(日)~1月22日(日) 両国国技館(画像は「NHKスポーツオンライン 大相撲『おすすめ動画』」など)


 1人大関の貴景勝が3年ぶり3度目の優勝を飾った。終盤に連敗して一歩後退したが、そこを我慢して勝ち抜けたのは立派。元大関は形なし、休場・引退もあり寂しい場所になった。大関取りの関脇・小結陣は期待外れだったが、小兵の活躍、ベテラン力士も地味ながら土俵を盛り上げたのは救いだった。


血みどろの中日を制した孤高の大関


 同じ伊勢ケ浜部屋の翠富士(前頭3枚目)が前日、鼻血を垂らして突っ張り合った一戦を強く意識したのが錦富士(同4枚目)。8日目の大関戦は前日の再現になった。互いに突き離しては突っ張り合い、押して押されての大熱戦。土俵際で大関がいなして回り込み張り手をかますと、翠富士はカッとなって張り返し墓穴を掘った。力を込めた右手は空振り、相手をよく見ていた大関が冷静に叩いて勝負を付けた。


 同門の小兵士2人を相手に血みどろの勝負を展開した大関は、ここで体力を大きく消耗した。11日目の小結琴ノ若戦では苦手意識も手伝い2敗目。押し込んでも迫力を欠き、冷静な琴ノ若を前にズルズルと後退した。後日談ではこの一番で首を痛めたという。続く12日目の霧馬山(小結)との一戦も精彩なく土俵中に転がされた。13日目が今場所のキーポイントだった。阿武咲(前頭8枚目)は中学相撲からのライバル。先に出世した貴景勝は中日の相撲を思い出し、再び血みどろの突っ張りを展開。最後は押し出して2敗の阿武咲を引きずり下ろした。


星勘定で変化 力不足の大関候補

 

 先場所は関脇で11勝を挙げた豊昇龍は大関昇進の足掛かりを掴む大事な場所との意識が過剰に出た。8日目の佐田の海(前頭4枚目)戦。立ち合いの変化には一切縁がないベテラン佐田の海に対して立ち合い右に飛んだ。前日は先場所優勝の阿炎を上手い取り口で破り5勝2敗。勝敗も内容も求められる力士に育ってきたと思った矢先の注文相撲に深く失望した。


<8日目/豊昇龍―佐田の海>


 褒められないことをした報いは必ずやってくる。9日目にメキメキ力を付けてきた新小結若元春とぶつかり、投げの打ち合いに敗れて3敗目を喫したうえに足を負傷。翌日休場した。この一番では立ち合いで豊昇龍は呼吸が合わずに仕切り直し。解説の舞の海は「いかんですねぇ」と苦言を呈した。8日目に立ち合い変化、この日も頭をよぎったか。楽して勝とうと邪念が入った。因果応報である。


 若隆景も同様。6日目の玉鷲(前頭2枚目)で、左に飛んだ。2勝3敗と前半で負けが混み、ひょっとしたらと思っていたら案の定だった。2人とも大型化が進む角界では小柄に属す。15日間のうち1日くらいは立ち合い変わっても、まぁお目こぼしはもらえる。しかし相手を選ばなくては白ける。佐田の海、玉鷲という、ベテランで正攻法の相手に仕掛けなくてもいいだろう。巨漢力士ならともかく、相手が変わってこないのを百も承知で変化するのは、見ていて不愉快である。場所中に引退した隠岐の海を持ち出すまでもなく、正々堂々が人を最も魅了する。


元大関に引退を勧告する


 いきなり初日から2人を当てた協会は、これ以上ない激励とでも思ったのか。あるいはどちらか一方を奈落に突き落とす所存だったか。御嶽海(前頭2枚目)と正代(関脇)の一戦は予想通り、どうというところのない凡戦だった。10勝で返り咲きの正代は6勝9敗。平幕降下の御嶽海は7勝8敗。土俵際で残す気力は微塵もなく、いったん後退すれば二度と前に出る相撲は見られなかった。


 あれほど渇望していた大関の地位は、正代が13場所、御嶽海に至っては僅か4場所。痛いの痒いのは皆同じ。怪我で取れないなら、気力がなくなっているなら引退し、後進に道を譲るべきである。近頃はプロ野球でも引き際を誤る選手が多い。つべこべ文句を垂れて移籍した挙句、独立リーグに行って地元大分の試合だけ出るという前ヤクルト・内川の我儘には呆れるが、この2人もしがみ付くだけしがみ付く気か? 幕内は人数に限りがある。同情の余地はない。


目に余る音痴の呼び出し、市馬師匠に学べ


 しかし、最近の呼び出しにはホトホト呆れてしまう。出る人ほとんどが音程を外し、息継ぎ(ブレス)がおかしい。土俵を作ったり塩を準備したり、本場所前には触れ太鼓を担いで街に繰り出す。大変な仕事なのはわかるが、本業である呼び出しにもう少し意を用いてくれないと困る。次郎、克之など三役格の呼び出しは特に聞き苦しい。ごめんねジローである。


  十両呼び出しの邦夫。美声で評判と聞いているが、昔の名呼び出しに比べれば、足元にも及ばない。オペラではないのだから、野太いフレーズを聞かせる必要はない。日本落語協会会長で日本一相撲甚句の上手い柳亭市馬師匠に即刻弟子入りすべきである。美声とはこの人の声を云う。(三)