大阪府は3月までに、製薬企業の品質管理等を担当する役員に向けた「製薬企業の責任役員の方へ~患者さんの安心・安全を守る~」と題した冊子を作成し、府内関係団体を通じて製薬企業に周知する。8日に開いた2022年度大阪府薬事審議会の了承を得た。冊子は府ホームページにも掲載するほか、関連講習会でも周知する。


 後発医薬品企業を中心に安全管理、品質管理上のコンプライアンス違反が続出し、医薬品全体の供給不安事態も招いていることから、製薬企業の責任役員に向けた意識向上を目的にして作成された。具体的には、薬事審議会の医薬品等基準評価検討部会で、「製薬企業における経営陣の製造管理・品質管理・安全管理業務の重要性に対する意識の向上」を目的とした冊子策定を22年度の事業として取り組み、この日公表した。


 策定にあたっては、府内製薬企業から参考となる取り組みや問題点の理解につながる事例を収集、検討部会で議論してきた。この結果、「責任役員の大切な心構えや考え方」について、▼法令遵守体制・クオリティーカルチャー▼現場の状況や問題点の把握▼正確な情報の把握▼報告体制の整備▼生産計画への配慮▼説明責任――について具体的事例を示しながら、「振り返りのための(課題意識の)投げかけ」も含めた内容で構成した。


 8日の薬事審議会では同冊子の策定とその内容に概ね好意的な評価が集まったが、冊子をより効果的なツールとするために、今後の立入検査やヒアリングの場で、冊子の活用状況を訊くことを提言する意見もあった。冊子の表現方法や文言に対する指摘もいくつかあったが、薬務課側は検討・対処する方針も約した。


 一方、企業関係者からは、冊子策定の意義は評価しつつも、後発医薬品企業の「体力」に関する問題提起もあった。冊子に盛り込まれた管理体制を整備しつつ、供給不安に対処していくには設備投資も人材確保・育成も必要になる企業が多いことに理解が必要だとして、大阪府から国に対して、融資を含めた支援策の必要を伝えてほしいとの要請もあった。