師走の総選挙が終わった。自民が291議席、公明が35議席を得て、予想通り与党が圧勝した。先週の本欄で紹介した週刊誌記事の“答え合わせ”をすれば、自民を4議席多く、公明を3議席少なく見積もったものの、合計では誤差1議席で結果をほぼ言い当てた元共同通信記者の政治ジャーナリスト・野上忠興氏(週刊朝日)に軍配が上げられるが、いずれにせよ安倍政権の大勝利であった。
で、この結果を受けた各誌記事の中で、最もインパクトがあったのが「『291議席圧勝』の全舞台裏 誰が敵かはっきりわかった 安倍『小泉進次郎』が邪魔だな」と大見出しを掲げた週刊現代だ。記事の冒頭にあるリードにも、こう書かれている。
《進次郎が喋れば喋るほど、国民の注目が集まり、自民党の好感度は上がる。しかし、安倍総理はどんどん霞んでゆく。このジレンマをどうするべきか——今回の選挙で、総理はひそかに決意した》
ところが、好奇心を掻き立てられ読み進むと、核心となる記述はただこれだけ。
《「進次郎が、邪魔になるかもしれない」 あの満面の笑みの裏で、安倍総理の脳裏を過ったのは、そんな思いだったに違いない》
羊頭狗肉は、週刊誌にありがちなこととは言え、さすがにこれはひどい。しかし、気を取り直し、他誌を見渡すと、やはり安倍首相vs進次郎というのは、1強多弱時代における今後の政局で、それなりに注目されるテーマにはなってゆきそうだ。
文春では、進次郎議員に密着したライターの常井健一氏がこう書いている。
《事実、安倍首相の周辺には、進次郎氏に対する冷たい空気が漂う。側近は突き放すように、こう語る。「どうせ石破(茂)さんの子分でしょ。安倍さんのことは嫌いだと思うよ」》
“親分”の石破・地方創生大臣がいる以上、2人が対決する場面は、まだかなり先の話になるはずだが、確かに安倍首相に対抗し得る名前は、もはやこの若者しか見当たらない。
今週、可笑しかったのは現代のヒマネタ。読者の高齢化に対応した現代やポストの“シルバーセックス特集”はすっかり定着し、高齢破産や死に関する記事も目立つのだが、今回のタイトルは「死んだあとで、あなたが言われること」。やがて迎える死を通り越し、さらにその先の心配までカバーしている。
中身は実に他愛もない。通夜の席に集まった同僚や部下の批判にさらされた商社の元管理職、教え子の間での不人気が発覚した元教育者、独りよがりのセックスを遊び相手に次々と吹聴された元プレイボーイなど、身も蓋もない“死後評価”の実を列挙して、生前の振る舞いを注意するように年配の読者を戒めている。何ともはや、切なくなる特集である。
文春では、著書『殉愛』をめぐる騒動で前回、林真理子さん宛ての手記を執筆した百田尚樹氏に対応して、林さんがコラムでまた、この件に触れている。その中で彼女は、自身が問題視するのは本の内容でなく、騒動を取り上げない週刊誌の「自主規制」なのだ、と説明したうえで、《この答えは、週刊文春の編集長からいただきたかったです》と掲載誌を皮肉った。
一応はこれで、文春誌上でのミニ騒動は“一件落着”となるようだが、批判記事は週刊朝日とサンデー毎日、そして一部女性誌でまだ続いている。百田氏は自身を目の敵にする新聞社の雑誌、ということで、“サヨクからの嫌がらせ”という話に持っていこうとしているが、ネット上のバッシングは、果たしてそれで鎮静化するのか。まだしばらくは、動きがありそうだ。
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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』(東海教育研究所刊)など。