大阪府薬務課が2023年度事業として新規予算化した、治験環境整備推進事業を協議する懇話会(座長・楠岡英雄国立病院機構理事長)が13日、大阪市内で初会合を開催した。DCT(分散型臨床試験)を軸にオール大阪での新たな治験整備体制の具体化を論議する。
今後はワーキンググループを組織し、実態調査などを通じて治験実施医療機関、DCTの仕組みとしては新たなカテゴリーとなる「パートナー医療機関」、市民への啓発などに資する基本資料収集と論議を重ねる方針。2回目は来年6月頃を予定する。
懇話会には大阪府医師会や看護協会、病院団体、病院薬剤師会、SMO協会、CRO協会などのほか、大阪大病院臨床研究センター長の山本洋一氏や、日本イーライリリー臨床開発本部の正木猛部長など11人で構成されている。初会合には厚労省医政局の治験推進室、同医薬局審査管理課、PMDAの幹部もオブザーバーとして参加した。
13日は、DCTを活用した治験、治験実施医療機関と関係機関の協力・連携、パートナー医療機関等のGCP上の位置づけ、CRCの確保、セントラルIRBの活用などをテーマに協議したが、参加者の一部からはDCTそのものに対する理解が不足していることもあり、現行の治験体制の課題や、DCTやGCPに関するレクチャー的な話題に終始した。
DCTについてレクチャーした正木氏は、DCTの意義や導入メリットなどを概説する一方で、その普及は「登り始めたが、まだまだ山頂は遠い」として、多様なステークホルダーとの協議が進んでいるわけではないこと、患者や治験実施医療機関以外のいわゆるパートナー医療機関との連携で解決すべき規制の理解やコスト問題など課題にも触れた。
規制側のオブザーバーからは、「大阪でDCTを軸に治験チャレンジ」への強い関心やシンパシーは表明されたが、GCPなどの基本原則の理解を求めること、DCT推進を示した今年3月30日付厚労省課長通知の延長線上に今回の懇話会設置と論議があることへの認識を再確認する見解が示された。