先日、文部科学省が、令和4年度(2022年度)の児童・生徒の問題行動や不登校に関する調査結果を発表した。注目したのは、不登校の児童生徒数29万9048人という数字。1991年は6万6817人だから約4.5倍である。ちなみにその間、少子化で小中学生の数は約3分の2になっている。


 ここ数年の激増は、「コロナ禍の影響による登校意欲の低下」なども影響しているとみられるが、かねて、朝の調子が悪く不登校になってしまった子の原因のひとつと考えられてきたのが、「起立性調節障害」である。


 この起立性調節障害を栄養との関係から探ったのが、『朝、起きられない病』だ。


 現代の医療では、自律神経の不調によって生じ、〈現代の夜型社会、運動不足、複雑化した社会における心理社会的ストレスが背景にある〉とされている。


 患者にとってつらいのは、〈午前中に症状が強く、夕方になると軽減するといった日内変動があること、加えて、春から夏(新学期などの環境変化のストレスの可能性も)に悪化しやすい〉ことだ。病気であるにもかかわらず、周囲からは一見して、怠けているように見られかねない(昔の親なら、無理やり学校に行かせていただろう)。


 小学校高学年~中学生の児童生徒に多くみられ、女子は男子より2割ほど多いという。本書を読む限りでは、決定版といえるような治療法はないようだ。周囲の支援や心理療法、補助療法として血圧をあげる薬やメンタルの改善薬が使われている。


■栄養に関心がある医師は皆無


 著者は〈自律神経の不調には少なからず栄養が関与している〉とみている。フードロスが問題になるような飽食の時代に栄養が足りないとはどういうことか?


 実は、量は足りていても、必要な栄養素が満たされていない〈質的栄養失調〉は生じ得る。〈質的栄養失調は、体の機能を損なうためにさまざまな体調不良を引き起こ〉す。特に性的に成熟し男女の差が出てくる二次性徴期(小学校高学年~中学生)には、必要な栄養素が増えることもあって、質的栄養失調が生じやすいという。


 中高生に関して、著者は〈食への自由度が高まる〉ことも要因として挙げられている。思春期を振り返ってみれば、誰もが思い当たるふしがあるだろう。学校帰りの買い食いをはじめ、自宅ではない場所で栄養を考えずに好きなものを食べる機会が増える。


 女子の場合は過剰なダイエットにも注意したい。かねて日本人女性の痩せすぎは問題視されてきたが、体調不良のリスクがある。


 栄養状態の問題点は〈①タンパク質不足 ②ビタミンB不足 ③鉄をはじめとしたミネラル不足 ④糖質過剰〉だという。


 調べてみたところ、起立性調節障害は大人もかかることがあるようだ。実は、私自身も大学1年生のとき「起きられない病」を経験した。午前中は立ち上がれないほどの体調不良。起立性調節障害だったかは今となってはわからないのだが(当時は「5月病」を疑った)、夜型の生活、異様に高まった食の自由度、初のひとり暮らしのストレスなど、発症する要素は十分だった。


 この病気で難しいのは「困ったらお医者さんへ」と病院へ行っても、栄養面からのアドバイスがもらえないかもしれないことかもしれない。飽食の時代のせいか〈栄養に関心のある医師はほとんどいなくなってしまった〉という。


 朝、起きられない状態が続くなら、まずは生活習慣、食生活を見直してみるといいだろう。食事やサプリメントのとり方については本書を読んでいただきたい。


 余談ながら、米国のサプリメントはFDA(米国食品医薬品局)の管轄だとか。当たり前といえば当たり前なのだが、FDAと聞くだけで急に品質が良さそうに思えてきた。(鎌)


<書籍データ>

朝、起きられない病

今西康次著(光文社新書968円)