医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)の中村祐輔理事長らは6日、大阪市の大阪国際がんセンターで会見し、国家予算化(2023年度補正予算12億円)された新規事業、「AI創薬指向型・患者還元型・リアルタイム情報プラットフォーム事業」の24年度における事業内容等について説明した。
同事業は医療現場との連携で、詳細な臨床情報と患者検体を計画的に収集し、患者層別化に有用な各種マーカーをリアルタイムに特定して創薬研究の活性化を図るほか、医療機関における同意取得や問診支援などのAIアプリケーションの開発を通じて、医療者の事務作業の効率化等を図ることを目的としている。創薬研究データベースとして医療機関現場の情報を収集しつつ、医療現場の合理化を通じて医療の高い品質確保につなげる。
プラットフォーム事業には、医療現場フィールドとして大阪国際がんセンターが参画する。またAIアプリケーションは日本IBMのwatsonxを軸にソリューション開発を進める。またデータベース収集に関しては、救急医療でのデータベース作成などの事業を行っているスタートアップ企業、TXP Medicalが参画する。同日の会見には大阪国際がんセンターの松浦成昭総長、日本IBMの金子達哉執行役員、TXP Medicalの園生智弘代表も同席し、それぞれの役割について語った。園生氏は医師。
中村理事長は同事業について、「AIを活用した患者還元型・臨床指向型の循環システム」との位置づけを示した。医療機能や治療技術が高度化するなかで、医療者と患者の知識ギャップが大きくなり、そのために同意取得などの創薬研究の障壁が拡大していること、加えて、医師の働き方改革やランサムウェア対策も含め、医療現場のAI化を進める必要を示した。
松浦氏は、大阪国際がんセンターの進化を示しながらも、患者満足度の点では課題も多いことを表明、医療スタッフの入力業務、文書作成、患者への説明などで生成AIの活用に期待を表明。
日本IBMの金子氏は、構築するAIアプリケーションについて、患者説明・同意取得支援、問診支援、会話型看護師自動音声、書類作成・サマリー作成支援などの具体的開発を示し、がんセンターだけでなく、その他の医療機関でも使える汎用性の高さや、用途拡大も開発コンセプトに組み込んでいることを明らかにした。