大阪府は26日、2024年度の「治験環境に関する懇話会」を開き、年度内にも治験関係者との連携に積極な「協力医療機関等リスト」を策定、治験実施機関に提供していく方針を了承した。また、府民向けアンケート調査も実施する。府は3月末から治験に関する説明会のオンデマンド配信を行っているが、視聴回数は870回を超えている。


 大阪府は23年度に同懇話会を設置、国が進める分散型治験(DCT)に基づいて、大阪における治験環境の整備を目指している。治験の先進地域としての評価を得ることも目的。


 このため、前年度にはDCTに関する関係者間の理解を進めるとともに、大阪における治験実施体制の現況の理解、治験実施医療機関と関係機関等の協力・連携のあり方、セントラルIRBの検討などをテーマにし、とくに治験環境基盤拡大を目的とする「協力関係機関」を拾い上げ、リスト化する方針が決められた。


 こうした経緯から今年1月から2月にかけ、府内の病院、大阪府医師会会員施設にアンケート調査を実施。312施設から回答があり、「治験等に協力が可能な医療機関」が177施設で、うち150施設が関係者との情報共有可能と回答した。また、治験受託可能医療機関は150施設でうち139施設が情報共有可能だった。


 ただ、「協力」に際しての条件としては、SMOの支援、外部IRBでの審査、日常的に連携実績がある治験実施医療機関(病院)との連携、検査時のサポートなどがあったほか、治験協力可能な訪問看護ステーション「一覧」を求める意見もあった。


 訪問看護事業所については昨年12月から今年1月にかけてアンケート、71施設が協力できると回答した。情報共有可能は69施設。医療機関からの指示及び医師との連携が条件となっているが、具体的な対応方、契約内容や経費に関しても関心があった。


●メーカー側にはGCP改定要望も


 治験依頼側となる製薬企業にも関西医薬品協会加盟社を対象にアンケート、25社が回答した。DCTでの治験実施は医療機関利用3社(治験実施計画数7件)、訪問看護事業所利用3社(同5件)の実績が把握できた。


 メーカー側からはDCTを通じて症例集積性が高まることへの期待が示され、医療連携ネットワークの拡大、症例エントリー機会増加の環境整備に期待は集まっている。一方で、患者宅への治験薬の直送、実施医療機関がデポに治験薬管理を委託できることなどのGCP要件の緩和を求める意見もあった。


●大阪府の情報提供内容はWGで検討


 大阪府が年度内の策定を進める治験協力医療機関等のリスト提供と、治験情報提供に関しては、同日の懇話会で取り扱い案が示された。今後、各委員の意見を徴して作成する。


 リストに関しては、治験業務以外の用途使用の禁止、提供先関係者以外の使用の禁止、適切な管理などを定める方針だが、協力は任意であり義務ではないこと、リストを策定する大阪府は、個々の依頼・交渉には関与せず責任を負わないことなどを明記。


 一方、パートナー医療機関に対する府の情報提供内容、府民へのアンケート調査については、ワーキンググループで今後協議を進める。


 提供する情報の範囲は臨床試験情報登録センター(jRCT)に登録公開されている治験等で、府内の医療機関を実施医療機関に含む治験、DCT等の実施促進につながると府が判断した治験、医師主導の治験、希少疾病医薬品等に関する治験、医療上の必要性が高いものとして国が企業等に開発要請した品目の治験-等とした。


 26日の懇話会には委員のほか、厚生労働省治験推進室の大湖健太郎課長補佐、同医薬品審査管理課の福田祐介審査調整官、PMDAの山口光峰信頼性保証第一部長も参加した。


 討議では、協力機関リストの取り扱いについて、情報管理やリスト削除要請への対応などについて府側への要望が集まり、府は円滑な運用対応を強調した。


 また、企業側委員などからDCT対応体制の効果測定、GCPの柔軟な運用などを求める意見も出された。これに対して厚労省側は「DCTは(治験活性化の)突破口」としてその展開に理解を求めた。GCPに関してはこれまでも状況に即した運用をしているとして、GCPの厳格運用が治験環境整備の障壁ではないとの認識が示される展開もあった。


 このほか、かかりつけ医制度を活用した患者への情報発信、臨床研究中核病院の拡大策、診療報酬でのインセンティブ策などの議論も。リスト提供取扱に関しては、紙ベースでの規定が多いことに注文がつく場面もあり、メールを含めた電子情報システム活用を求める意見もあった。