永田町は解散・総選挙へと走り出し、週初めまでの情報で書かれた週刊誌にも関連記事が現れたが、次号から各誌に記事が溢れるはずなので、今回はあえて触れずにおく。 


 で、今週これ本当?と新鮮な驚きを感じたのは、文春が「戦慄スクープ」と銘打った『中国サンゴ密漁船を撃て! 海保特殊部隊SST中国漁船「急襲逮捕」現場』という記事。小笠原沖の海底をイナゴの群れのように食い漁っている中国船団についての話である。 


 その昔、北洋漁業の日本船団が旧ソ連にバンバン「拿捕」されていた記憶を持つ世代にしてみれば、なす術もないわが国・沿岸警備のありさまに歯がゆさが募る毎日だが、結局のところ、限られた取締船で密漁者を一網打尽にすることは、銃砲による威嚇が許されない限り、やはり難しいようだ。 


 ところが、文春記事によれば今回、日本の排他的経済水域から領海内に侵入した1艘のサンゴ密漁船に対し、機関銃で武装した海保特殊隊員による、ものものしい制圧事例があったのだという。しかも、そのやり方は、荒波に揺れる密漁船の甲板に、上空のヘリから武装隊員がロープで降下して、刃物で抵抗する中国人船員を次々となぎ倒すという、アクション映画さながらの捕物だったらしい。 


 そのシーンがあったのは10月5日。出撃したのは、SSTという海保の秘密部隊なのだという。記事は、一部始終を目撃した日本人漁師の証言によって書かれていて、海保は「ノーコメント」を貫くが、官邸は、日中首脳会談を前に死傷者が出るような「交戦」になりはしないかと、肝を冷やしていたという。 


 新聞によれば、中国当局の圧力でそろそろ船団も引き揚げそうな話だが、とにかくこの一件、環境破壊という問題にもまして、尖閣海域に巨大船団が現れた場合、いかに血なまぐさい展開を引き起こしかねないか、我われにまざまざと思い知らせるものだった。 


 現代のネタを新潮が追ったのは、ホステスとしてのバイト歴を理由に、日テレが女子アナに採用した学生の内定を取り消した騒動。現代は女学生が10月に日テレを訴え、法廷闘争に持ち込んだことを報じたが、今どきホステスのバイトくらいに目くじらを立てる日テレの対応を、新潮も「愚の骨頂」とこき下ろし、学生の側に立つ。 


 両記事によれば、日テレ側の採用担当者は、ホステスとしての過去を週刊誌に暴かれたら、彼女自身が耐えられるのか、という論法で説得を試みたそうだが、結局、週刊誌の矛先は皮肉にも、学生でなく日テレに向けられてしまった。 


 あと、1ページ足らずの短信だが、新潮が報じた『「幸福の科学」大学不認可」の反撃は「大川隆法総裁」の霊験本』が妙に面白い。 


 教団による大学新設が国に認められなかった、という話で、その理由のひとつが、大川総裁お得意の「霊言」を学問にしようとしたことだったらしい。キリストや坂本龍馬など歴史上の偉人の霊魂から、安倍首相や金正恩といった存命中の人物の守護霊まで呼び出して話をさせ、出版してしまう教団のユニークさは、新聞の書籍広告でお馴染みである。国側の不許可に怒り心頭な教団は早速、文科省審議会の大学分科会会長や下村大臣の守護霊を呼び出し、刊行物で吊し上げているという。 


 個人的なツボだったのが、教団広報のコメント。「審議会という『隠れ蓑』で詳細が明かされない以上、霊言という宗教ジャーナリズム的手法で迫るしかない」。 


 何だかわけがわからないが、とにかく笑える記事だった。

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三山喬(みやたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』(東海教育研究所刊)など。