大阪府薬剤師会は10月1日から、適正服薬推進事業である「薬局ナッジ」を寝屋川市、松原市の2地域をモデル地区にスタートさせた。大阪府国保課が24年度から推進する「大阪府国保ヘルスケアアップ事業」の一環。府薬は全面的な補助を得て事業を進める。事業期間は2ヵ月。実質的には12月までかかるとみられている。


 同事業は、6剤以上の重複・多剤服薬者をピックアップして保健指導でかかりつけ薬局が連携するほか、残薬管理指導を通じた医薬品適正使用啓発を行い、医療費の適正化を図ることが目的。市町村が対象者を選択、当該患者が訪問する薬局が患者を指導する。スキームはモデル地域(寝屋川市・松原市)が構築し、通知・指導・啓発に関する手法として「ナッジ」(気づき)の要素を活用する。


 具体的にはモデル市が対象者を抽出、リスト作成して対象者に通知し、対象期間内にレセプト点数が最も大きい薬局を参考記載、通知後に保健師等が電話でかかりつけ薬局での服薬管理指導を奨め、それらの対象者のうちの希望者がかかりつけ薬局に申し込むという流れが想定されている。かかりつけ薬剤師は指導結果をモデル市に報告する。


 残薬管理は、かかりつけ薬剤師が残薬管理指導を必要と判断した者に対し、残薬管理シートを配布、自宅にある残薬を薬局に持参するよう指導する。


 管理・指導の対象者は、生活習慣病患者を軸にした60歳未満の複数医療機関受診者。精神疾患や透析治療患者などは対象としない。対象者数は松原市が100人、寝屋川市が60人を想定、うち30人ずつが残薬管理の対象となるものとみられる。


 大阪府によると、府内の重複投薬は、患者割合(全国2.65%、大阪府2.96%=約12万人)、薬剤費割合(全国0.56%、府0.64%=約30億円)ともに全国を上回る。一方、6剤以上の多剤投与も、患者割合(全国22.3%、府22.5%=約135万人)、薬剤費割合(全国62.0%。府64.2%=約3124億円)と全国を上回っている。


 今回の事業は国の保険者努力支援制度の一環。保険者の取組状況に応じて交付金が決まる。国保を対象にした医療費適正化策で、「薬局ナッジ」は大阪府薬が事業委託された。また、大阪府医師会、大阪大学経済学部も連携・協力者として参加している。