医薬基盤・健康・栄養研究所(基盤研)、大阪国際がんセンターとTXP Medical社は24日、3月から共同研究を進めているAI創薬プラットフォーム事業(生成AIを活用した患者還元型・臨床指向型の循環システム開発)について、「リアルタイムかつ自動更新される臨床情報収集バックアップシステム」が構築できたことを明らかにした。近く大阪国際がんセンターで運用される見込み。
発表では、今回のシステム開発と一部の実装運用だけでなく、リアルタイムの大規模臨床情報データ(いわゆるビッグデータ)となることで、創薬開発への期待も示された。大阪国際がんセンターではその活用に向け、近く個別患者の同意取得の作業も開始する。
基盤研の中村祐輔理事長は、日本の医薬品産業は大きな変革の時代を迎えて、国際的には大きく取り残されているとの指摘を改めて示しながら、今回のシステムが医薬品企業の研究開発、治験にも大きく寄与するとの期待を強調。すでに製薬協にアナウンスしていることも明らかにしながら、具体的な協議開始を企業側に促した。
運用が始まるシステムは、国内では多様なベンダーの電子カルテが医療機関個々に採用され、データ規格の統一が困難だが、どんな電子カルテでも国際標準規格のFHIRへ迅速に変換する技術を開発したとしている。必要な情報が日々担保され蓄積し、クラウド上でのバックアップ構築をすることが可能。
これによって、災害時やサイバー攻撃などの有事に際して、電子カルテが使えなくても、クラウドに構築されたバックアップで診療継続が可能となる。中村氏らは、災害大国の日本でこうした機能が活用されることの重要性を強調。サイバー攻撃に対しても同様のメリットを説明した。
TXPの園生智弘代表は、今回の開発に際して病院情報システムは巨大なため、重要情報のセレクトを通じてローカルコードマッピングし、それを医師によってバリデーションするシステムとしたことを明らかにした。さらに本システムを短期間に導入するにはITエンジニアと医療スタッフがハイブリッドチームをつくることなどのノウハウも明示。他の医療機関への導入に期待を示した。
また、同システムの医療機関ごとの開発コストは500万~1000万円程度で、電子カルテシステム構築の5分の1程度だという試算も示した。