今年は10月7日から14日がNobel Week。日本人はイグ・ノーベル賞にしか縁がないのだろうか、と少し寂しく思っていたら、テレビから聞き覚えのある名前が流れてきた。Google DeepMind CEOのDemis Hassabis氏だ。手前味噌だが、今春AI創薬の記事を書いた際に、インタビュー動画等も視聴して「この人、天才だな!」と思っていた。元々はチェス・チャンピオンで経歴もユニークだ。
そのHassabis氏とJohn M. Jumper氏(いずれもロンドンのGoogle DeepMind)が「タンパク質構造予測」、David Baker氏(ワシントン大学シアトル校教授)が「計算によるタンパク質設計」でノーベル化学賞を受賞することになった。生年はというとBaker氏は1962年(今年62歳)だが、Hassabis氏は76年(同48歳)、Jumper氏は85年(同39歳)。受賞者もずいぶんと若返ったものだ。ノーベル財団から公開された解説書類に「AlphaFoldのしくみ」に関する図も掲載されていたので、仮訳し以下に紹介する。
かつて、科学誌Natureの関係者から「狭い専門分野での知見は、たとえすばらしい研究でもその分野の専門誌にまかせる」「Natureは世界の人々と広く共有すべき知見をいち早く扱う」と聞いたことがある。研究内容にかかわらず「いつかはNatureやScienceに自分の論文を載せたい」という人へのメッセージだった。ノーベル賞も、つい「日本人の受賞なるか?」に関心を向けがちだが、研究の優劣でなく対象に向き不向きがありそうだ。近年は “現在”や“近い将来”に広く大きな影響を及ぼす研究にフォーカスしているという点で、自分の中ではNatureのイメージと重なっている。
2024年10月9日時点の情報に基づき作成
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本島玲子(もとじまれいこ)
「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。
医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。