プロ野球公式戦は11月3日の日本シリーズ「横浜DeNAベイスターズ vs 福岡ソフトバンクホークス」第6戦で幕を閉じた。横浜が1998年以来26年ぶり3度目の日本一。クライマックスシリーズでシーズン3位から勝ち上がったのは、2010年のロッテ以来2度目。セリーグで貯金2の横浜が貯金42のパリーグ覇者を2連敗のあと4連勝し、怒涛の下克上を達成した。


3、4戦目の継投失敗で流れが変わった


 戦前の予想ではホークス有利は動かず、2戦先勝でシリーズの帰趨が見えたと思われた。しかし、怪我で登板が危ぶまれた横浜のエース東が3戦目で先発し、0安打と打たれながらも7回1失点と試合を作り、連敗を止めたのが大きかった。一方、ホークスは先発スチュアートが不安定ながら4回1失点と踏ん張ったが、制球難で内容はよくなかった。試合の流れを変えたのは、ホークスの継投。5回から2年目の大津がマウンドに上がり、桑原にいきなり一発を食らう。これで委縮して四球を連発し2点を失った。


 4戦目も似たような展開だった。ホークスは先発石川がオースティンに被弾し先制を許す。6回は2死1塁でオースティンを迎え、尾形に継投。ここは抑えたがイニング跨ぎの7回、先頭の宮崎にソロを浴びて動揺し、1死満塁としたところで新人岩井にスイッチしたが、桑原に2点タイムリーを浴びた。横浜は先発ケイが7回零封と前日の東を凌ぐ好投を見せた。その後5、6戦は横浜が大勝してシリーズを制した。ホークスは本拠地で3戦とも先発が6回持たずに降板したうえ継投に失敗し、7連勝していた日本一の座を奪還できなかった。


<26年ぶり3度目の日本一>


 横浜の先発が好投したため、ホークスは先発を降ろさざるを得なくなり、継投では公式戦では活躍した若手投手が一発を食らって仕事ができなかった。これがシリーズの行方を決めた。また、今宮を3番に置いたり、1番に実績の乏しい若手野手を起用したりと、ホークスはペナントレースにはない特別仕様の打線で臨み、機能しなかった。横浜はほぼ固定したオーダーで普段着野球を通した。指揮官の采配力の差が出たともいえる。


前例がない9月失速の首位転落


 セリーグは先発陣が充実している広島が6月から急上昇し、一度後退しながら8月には首位に上がった。しかし、同月後半から巨人と鍔迫り合いを演じ、9月に大失速した。とくに9月11日の巨人との天王山で守護神の栗林がまさかの6失点で逆転負け。これが象徴的な一戦になり、カード3連戦を3連敗。9月は4勝20敗と考えられない成績でリーグ優勝を逃した。今季のセリーグは中日、ヤクルト以外の4球団が首位に立つデッドヒートの展開だったが、戸郷・菅野の2枚看板が支えた巨人が制した。広島も森下・床田・九里・大瀬良と4枚が頑張ったが、打線が弱かった。本塁打は坂倉の12本が最高。大砲不在で先発見殺し打線だった。


<守護神・栗林が9回裏6失点降板>


 セリーグは普段からあまり見ないので大きなことは言えないが、スター不在の印象がある。メジャーで活躍するのは、ダルビッシュや菊池、大谷や山本など最近ではパリーグ出身が多い。初年度に2桁勝ったカブスの今永は別として、全体に選手の粒が小さくなったのだろうか。前年の覇者阪神は、森下・大山・佐藤の主軸は強打者の雰囲気がないし、巨人の岡本は穴が多すぎる。ヤクルトの村上も同様で、メジャーで通用しないのではないか。


<巨人の2枚看板 戸郷(左)と菅野(右)>


 各チームとも大きな決め手がないので、来季も混沌としたペナントレースになるのではないか。ただ、下位の2球団は来季も低迷するような気がする。巨人は菅野がメジャーに行けば、その分の補填がカギになる。戸郷はメジャーでも通用する力があるが、肘をあまり使わず腕を伸ばして投げるアーム投法は腕への負担が大きく、投手寿命を縮めなければいいのだが……。


強者ホークスと新庄ファイターズ


 パリーグは大方の予想どおり、ホークスが順当に制覇した。近藤・山川と並ぶ打線はやはり驚異的。ただ、柳田に陰りが見え始め、先発陣も有原・モイネロに続く実力者が育っていない。現時点では他球団に比べて戦力が優っているが、3年後にこの地力を維持しているかどうかは疑わしい。


<主軸2人が打率・本塁打・打点の3冠を独占>


 そのときに力を付けていると思われるのが日ハムだ。3年前、お調子者の新庄が監督に就任した際、誰もがこの急成長を想像していなかった。今季はホラも吹かずオーソドクスな采配を続けて確かな結果を残した。大人はその顔を見れば人となりが判断できると信じて疑わなかったが、この男は違った。外見はチャラ男でも、芯は九州男児で頭も悪くない。投打ともに新庄が目をかけてきた選手が順調に育っている。


<シーズン中、黒マスクを通した>


 来季はこの2球団を軸にペナントレースが展開されるはずだ。ロッテは佐々木の去就で振り回されており、仮に残留してもムードが悪い。残れば雰囲気が悪く、出ていけば戦力ダウンは免れない。オリックスは先発の再編ができないと、来季も苦しい。西武は今後3年、我慢の時期だ。楽天は宗山をどう扱うのか関心が高まる。母校のスターとして一番行ってほしくない球団に決まった。指揮官のクビを1年ですげ替える球団が選手を大事に扱うわけがない。1、2年は社会人野球に進んで次のドラフトを待ってほしいが、そうもいくまい。


いい加減にしろ、大谷報道


 大谷の過熱報道が1年を通して続いている。食傷気味、どころの騒ぎではない。大谷に責任はない。賭博通訳の騒動は気の毒で、ワールドシリーズの熱狂ぶりまでは理解できる。しかし、四六時中伝える話ではない。せいぜいがスポーツニュースのコーナーだけだろう。


<食傷気味の過熱報道>


 もうひとつ。観客の応援スタイルである。メジャーも騒ぎはするが、飛んだり跳ねたり、選手ごとの応援歌、のべつ幕なしの声出し、熱唱など、ダサい応援などしない。もううんざりである。球音は聞こえず、ひたすら観客の大音声を画面越しに3時間聞かされるのだ。メジャーのように1球1球静かに観戦し、2ストライクを取ったら拍手などで盛り上げる正当な応援を真似てほしいものである。(三)