近畿薬剤師学術大会が10日、大阪市で開かれた。開会式で挨拶した大阪市の横山英幸市長は、大阪市で国家戦略特別区域事業として7月から実質スタートした「調剤業務一部委託」に触れ、「同事業は薬剤師が対人業務に集中できるようにすることが目的」として理解を求めた。そのうえで、「薬剤師が地域における役割を果たす」ことへの期待を示した。


 また、吉村洋文大阪府知事(写真)も挨拶し、2025大阪・関西万博は「いろいろと(批判を)言われているが、大丈夫」と笑顔を見せたうえで、「いのち輝く未来社会のデザイン」のメインテーマに関連して、今後の超高齢化社会では薬剤師の役割も重要になるとの認識を伝えた。さらに、医療関係者のそれぞれの職能に関連して、縦割りではない地域活動を求め、高齢者の健康維持への薬剤師の応分の活躍を求めた。



●高齢者定義は75歳以上に


 特別講演した森下竜一大阪大学大学院教授は、関西万博を中心にメッセージを伝え、入場者数は個人的には2000万人程度と予測しているとした。


 森下氏は万博テーマの「未来社会」に関して、健康寿命を延伸することで社会保障政策、経済政策を大きく変えることができるとの考えを改めて強調。「高齢者」の定義は75歳以上との日本老年医学会の提案に賛同した。また、健康の質自体はすでに現段階で「高齢者は75歳以上」になっているとの観測も示し、60~65歳で区切る現行諸制度の見直しが急務だとした。


 こうした社会への対応課題としては認知症を取り上げた。認知症および軽度認知症の未診断率75%の改善を訴え、視覚を活用する「アイトラック式認知機能評価アプリ」などの新たな簡易型検査機器の診療所レベルでの浸透に期待を示した。視覚活用型の認知症機能評価アプリは30秒で終了するタイプが万博で経験できる。


 森下氏は70年の大阪万博の「太陽の塔」が残されたように、2025年万博では「大阪ヘルスケアパビリオン」の一部と、そこでデモンストレーションしたソフトウェアについて、市民などが日常的に街中で使えるようアレンジして、レガシーとする計画も明らかにした。