大分大学医学部
総合内科学第二講座 教授
門田淳一 氏
日本呼吸器学会の「咳嗽診療ガイドライン」の作成委員で、大分大学医学部総合内科学第二講座の門田淳一教授が大正富山医薬品㈱のプレスセミナーにおいて、「あっ!その咳大丈夫?咳の診断と治療について考える」の演題で講演を行った。
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咳というのは、気道中の過剰な分泌物や異物を排除する重要な生体防御反応だ。しかし、感染症を広く伝播させてしまうものであり、患者さんが病院を受診するもっとも頻度の高い症候の一つとなっている。
咳のスピードは時速750kmで、新幹線のおよそ2倍。国民生活基礎調査によると、咳や痰が出るのがもっとも多いのは0歳〜4歳で、人口1000人に対して120人という結果が出ている。10〜50歳代は40人でほぼ横ばいで推移しているが、60歳代になると「ゼイゼイする、息切れがする」症状を含め右肩上がりに増えていき、80歳代では90人となっている。
咳の原因は過剰刺激によるものだ。これは2通りに分けることができる。1つは生理的な咳で
・湿性咳嗽(気道の過分泌)、気道内異物
・反応性抗進(咳受容体感受性抗進) = アトピー咳嗽
・胃食道逆流による咳嗽
・降圧剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)による咳嗽
となる。もう1つは気管支喘息で、反応抗進として咳喘息がある。
痰の有無で咳を分類することができる。喀痰を伴う「湿性咳嗽」は、喀痰を排出するための生理的咳嗽で、正常な反応といえる。痰を減らすことが治療となる。喀痰を伴わない「乾性咳嗽」は、咳嗽のみが苦痛となる病的咳嗽で、気道中のどこかに炎症が起きている。疾患特異的な治療を考える必要がある。
咳は持続期間によって3分類されている。急性咳嗽は3週間以内、遷延性咳嗽は3〜8週間、慢性咳嗽は8週間以上である。咳の合併症は以下のように多岐にわたる。
・心臓血管系 : 低血圧、意識消失、静脈破裂、徐脈、頻脈。
・神経系 : 咳失神、頭痛、空気塞栓、髄液鼻漏、痙攣。
・消化管系 : GERD,脾破裂、ヘルニア。
・泌尿器系 : 尿失禁、膀胱の尿道への陥入。
・筋骨格系 : 腹直筋断裂、肋骨骨折。
・呼吸器系 : 縦隔気腫、気胸、皮下気腫、喉頭損傷、気管支断裂、喘息発作の誘発。
・その他 : 皮下出血、手術創の離解、便秘、嗄声、めまい。
いずれにしても以上の症状は生活の質(QOL)を確実に低下させる。慢性咳嗽の核原因疾患の特異的治療薬は以下のとおりである。
・咳喘息 = 気管支拡張剤
・胃食道逆流症 = プロトンポンプ阻害薬またはヒスタミンH2拮抗薬
・副鼻腔気管支症候群 = マクロライド系抗菌薬で長期療法
・アトピーは咳嗽 = ヒスタミンH1拮抗薬
・慢性気管支炎 = 禁煙
・降圧薬(ACE阻害薬)による咳 = 薬剤の中止
(寿)