塩野義製薬と大阪公立大学は3日、感染症分野で包括的な連携を行うことを目的に協定を締結した。大阪市内で行われた締結式には、塩野義製薬の手代木功社長、大公大の辰巳砂昌弘学長など双方の幹部が出席した。協定は1年ごとに見直し、更新する方針。



 包括連携について手代木氏は、塩野義が過去10年間で生み出した自社創薬の感染症薬を紹介しながら、感染症関連製品を継続して創出してきたこと、今後もその姿勢に変わりがないことを強調。一方で、感染症治療薬はパンデミック予測が困難なこと、パンデミック収束後に急速に市場が縮小するなどのリスクも示し、製薬企業は感染症分野の創薬事業を継続できるかどうか、現状は岐路にあるとの見方も示した。


 ただ、ゾフルーザは3年ほどは売上ゼロで、株主などの批判は受けたものの、簡単にやめることはできない、民間企業としての使命は果たし続けるとした。一方で、ゾコーバを例に抗ウイルス薬は軽中等症でも使える開発に今後も注力する方針を強調しながら、こうした対応は日本の医療保険制度が支えになるとも述べた。


 大公大との提携については、臨床研究ネットワーク構築や人材育成、共同研究などの展開に期待を寄せながら、母体である大阪府・市行政との連携に大きな意味があるとした。行政との連携はコロナ・パンデミック時に、府内の保健所に同社もボランティアスタッフを送ったことを明かしながら、保健所ネットワークなどとの密な連携を模索することを示唆した。


 一方、大公大は医学部と獣医学部を擁し、ヒトヒト感染など人獣感染症への警戒・対応などの情報に迅速にアクセスできることから、新たなパンデミックに備えを強化する産官学民が連携する「大阪モデル」構築を目指す意欲も示した。


 大公大は市大・府大統合後に、大阪国際感染法研究センター(OIRCID)を設置、医学部、獣医学部、理学部など理系学部全般と文系学部の「総合知」を活用した「マクロ感染症学」の研究組織としてアピールしている。センター長の掛屋弘氏は、新興感染症は「社会の病気」との認識で、対応を進める必然を強調、都市型感染症学の確立にチャレンジするとした。塩野義との連携では掛屋氏も「大阪モデル」構築への期待を強調した。