医薬基盤・健康・栄養研究所(基盤研)は4月から、「次世代生体イメージング創薬研究プラットフォーム」を始動する。12日に大阪市内で開かれた説明会で概要を明らかにした。独カールツァイスが開発した、現在では世界最先端の「二光子励起顕微鏡」を導入、製薬企業のからの受託研究、人材教育などに対応する。
12日にレクチャーした、基盤研創薬イメージングプロジェクト招聘プロジェクトリーダーの石井優氏(写真)は、導入した二光子励起顕微鏡は現段階では世界最高のモダリティであり、最高の生体イメージング系を確立することを強調。
基盤研の霊長類医科学研究センターと連携してサルでの生体イメージング評価系を開発することや、イメージング創薬研究のPDCAサイクルを加速させて、秘匿性の確保、薬事対応データ管理、質保証体制の確立を通じて、データの再現性と信頼性を保証し、薬物体内動態評価での新たなステージを提供するとした。
具体的には、自然な生理環境下での観察が可能でイン・ビトロより現実的信頼性が高い結果が得られる、細胞や組織間の複雑な相互作用が評価できる、全身的な生理反応や病態の進行を評価し副作用の発見につながる-などをアピール。標的分子・細胞の動態、DDS解析についてイン・ビボで薬効評価系をつくることや、新規病原性細胞の発見、新薬標的の同定、「光生検デバイスによる非侵襲的リアルタイム診断」などもメリットにあげた。
新治療法開発への具体例としては、特許取得した炎症性破骨細胞を特異的に抑制する「FOXMI阻害」を示したほか、肺線維症の原因である線維化誘導マクロファージの発見、肝組織内での炎症を調節するマクロファージの発見など「視る」ことができる、二光子を含む多光子顕微鏡の成果を明らかにした。
基盤研では4月以降、新たなプラットフォームに関して、具体的な創薬開発研究受託や、二光子励起顕微鏡の操作技術などに関する個別の見学なども受け付けるとしている。多光子励起顕微鏡を開発部門に有する製薬企業はすでにあるが、十分な活用が進んでいる状況ではなく、基盤研の新プロジェクトに関心が集まる。
なお、基盤研は4月から英語略称をNIBNに変更する。従来はNIBIOHNだった。