産業医科大学医学部
第一内科学講座 教授
田中良哉 氏
産業医科大学医学部・第一内科学講座の田中良哉教授がブリストル・マイヤーズのメディアセミナーで「関節リウマチ:唯一のT細胞阻害剤」と題した講演を行った。副題は、「生物学的製剤のベストユースを目指して」。アバタセプト全例調査の中間結果も、合わせて報告された。
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関節リウマチとは、手指やひざなどの全身の関節に腫れや痛みが生じて、関節がうまく動かせなくなる病気だ。症状が強くなると、物をつかむ、持ち上げる、歩く、座るといった日常生活に支障をきたすようになる。また、手や指などの関節がこわばる「朝のこわばり」のために、思うように起き上がれず、動けないといった症状が散見される。症状が進むと関節が破壊されて変形することもある。
日本では現在、70〜100万人程度の患者さんがいるといわれている。30歳から50歳代で発症することが多いが、10〜20歳代で発症することもある。患者は女性に多く、男性はその3分の1から5分の1程度だ。
もともと当人それぞれの体質に対して、外界より何らかの刺激が加わるなどして免疫に異常が生じ、関節リウマチが発症すると考えられている。自己免疫疾患(膠原病)といえる。
症状をできるだけやわらげ、関節の破壊を止めることで患者のQOL(生活の質)を向上させることが治療の目的だ。治療法は
① 薬物療法
② 手術療法
③ 理学療法(リハビリテーション)
の3つに分けられる。症状の大小、進行の度合いでこれらの治療を組み合わせる。
関節リウマチを発症した際に、できるだけ早い時期に薬物療法に取りかかり、腫れや痛みのない、「寛解」と呼ばれる状態を目指すのが理想だ。非ステロイド系抗炎症薬は痛みをやわらげ、ステロイド薬は炎症を抑える。抗リウマチ薬は
① 免疫調節薬
② 免疫抑制薬
③ 生物学的(バイオ)製剤
がある。免疫の異常に対して働き、関節リウマチの進行を抑える効果がある。
レミケード、アクテムラ、オレンシア(アバタセプト)、エンブレル、ヒュミラ、シンポニーなどのバイオ医薬は近年、著しい効果を上げている。メトトレキサートと併用した方が良い薬もあるが、オレンシアは必須ではなく、T細胞を標的としている。
日本リウマチ学会で報告された内容の骨子は次の通りだ。
アバタセプトは構造的寛解、身体機能の保持が可能。バイオナイーブ(バイオ製剤を使用したことがない)患者への導入が鍵となる。バイオ製剤は比較的安全だが、有害事象の治療や予防、全身的管理を今後、もっとも優先する必要がある。