日本大学医学部
睡眠学・呼吸器内科学分野教授
赤柴 恒人氏
ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)は、せき止め専門薬「アネトン」(顆粒、Z錠、Z液)の発売を機に、プレスセミナーを開いた。日本大学医学部の睡眠学・呼吸器内科学分野教授の赤柴恒人先生が「症状でみるせきの見分け方と対処法」と題して、演述した。
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せき、たんは呼吸器の疾患で、ありふれた症状である。ほとんどの人がかぜをひくように、せきやたんも経験する人は多い。上気道のウイルス感染だが、せきは気管支以下である。なんらかの原因でせきは出るが、ただ単純にとめればいいというものではない。
せきで思い浮かぶのは、かぜ、インフルエンザ、百日咳、肺炎、結核、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などである。そして吐き気を伴ったり頭痛がしたりする。睡眠不足になる場合もある。なぜか睡眠時に憎悪する。また周囲の人から厳しい視線でみられることになる。
せきを広辞苑でみると、せくこと。すなわち喉頭・気管などの粘膜に加えられた刺激によって、反射的に起こされる強い息、となっている。気管に入った異物や痰などを排除するための「生体防御反応」であり、自然に治癒する普通の感冒から、致死的な心疾患、肺がんなど、せきの原因は多岐にわたっている。老人の誤嚥の場合もある。
せきのときのいきむ力は相当なものがある。体力を消耗して、ぐったりすることもある。せきによって消費されるエネルギーは、一回あたり約二カロリーである。肋骨を骨折したケースもある。昼間はさほどでなく、夜ベッドに入るとせきがよく出て眠れなくなる。翌日に影響が出るので、QOL(生活の質)の低下をきたすことになる。
小児の場合、せきによって悪心・嘔吐をひきおこす場合がある。咳嗽性頭痛がおこることがあり、いきむことによって血圧が上昇する。激しいせきで、気道粘膜への負荷がかかり、上皮細胞がはがれやすくなり、ますます気道が過敏になっていく。
コンコンというのは痰を伴わない乾性のせきであり、ゴホンゴホンというのは痰を伴った湿性のせきである。急性のせきは二週間以内、遷延性のせきは三〜八週間、慢性のせきは八週間以上続く。
急性期は、乾性の場合かぜ症候群(初期)、湿性の場合かぜ症候群(後期)、急性気管支炎で、OTCで適応できる。遷延性・慢性期は、ぜん息、肺がんなど重篤な症状につながるものが数多くあるので、専門医に診てもらう必要がある。
OTCの鎮咳去痰薬をうまく使って、それでもせきが続くようなら病院へ行く必要がある。まずはセルフメディケーションであり、せきエチケットを念頭に感染拡大防止のため周囲に配慮し、夜間睡眠時のせき対処法として、就寝前にせき止め薬を服用する。(寿)