東京女子医大 眼科学教室
高村 悦子准教授


 日本眼科医会は、目に関する正しい知識の啓発を行うことにより、国民の目の健康の向上に寄与するため「目の健康講座」を毎年開催している。20年度は全国13か所での開催が予定されている。このほどのプレスセミナーで、東京女子医大・眼科学教室の高村悦子准教授が「ドライアイは病気である」と題して演述した。


        

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    「ドライアイ」は、目が乾いてしまい、疲れる状態になることである。パソコン、モバイル、携帯電話のディスプレイなどを見続ける機会が増え、患者さんが増えているのが現状である。オフィスだけでなく、学校や家庭にもIT(情報技術)環境が確実に普及している。したがって利用者の若年齢化も進んでいる。このような環境下で過ごす多くの老若男女に、眼精疲労をはじめさまざまな目の健康障害が現われてくるのは、当然の成り行きだといえる。中でも注目されているのが「ドライアイ」というわけである。

 

 日本眼科医会は06年、ドライアイを次のように定義している。「さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」。

 

症状は、目が疲れる、目がしょぼしょぼする、目がごろごろする、目を開いていられない、目が痛い、目が赤くなる、涙が急に出てくる、はっきり見えない、などである。

 

この状態が毎日続くと不快感が高まる、QOL、つまり生活の質が低下する。にもかかわらず病気だと思っていない人が半数はいる。2060代の男女1061名のアンケート調査結果がある。病気と思っている人50%、病気とは思っていなくて体質の一種が25%、体質の変化が25%である。大半の人が薬局で目薬を買って使えばいいと思っている。使い方を間違えるとドライアイを悪化させてしまうのに、である。実態調査ではこのほかに、オフィスワーカーの3人に1人、60歳以上の約7割、女性は9割以上、がそれぞれドライアイであるとの点が明らかになっている。

 

 

現代社会はとにかくドライアイを起こしやすい環境になっている。コンピュータ(まばたき減少)、エアコン(涙の蒸発が早まる)、コンタクトレンズ(涙を出す反射が鈍る)、車の運転(まばたきが減る、エアコンの風がよくない)、飛行機(機内が乾いている)等々が引き金になっている。

 

 

まばたきは、常時微量に出ている涙を目の表面にゆきわたらせて、視界を良好にしている。

 



涙の水分は


①目の粘膜の乾燥を防ぐ


②汚れ(細菌、花粉、異物など)を洗い流す


③目の表面をツルッとさせて、はっきり見えるようにする、という働きをしている。

 

涙の成分は


①ビタミンA、成長因子が目の粘膜を正常に保つようにしている


②抗菌物質(ラクトフェリン、リゾチーム)が目を外敵から守る働きをしている。

 

涙は油層、水層、ムチン層の3層からなっている。水層を目の表面にはりつける粘液がムチンである。そして水分の蒸発を防いでいるのが油層である。

  

 ドライアイは病気である。そしていろんなタイプがある。市販薬をいくら使い続けていても治らない。自己判断ではなく、眼科で正しい診断を受けることが大事である。快適な日常生活を送るためには、適切な治療を継続することである。最近はすぐれた治療薬が出てきている。

(寿)