茨城キリスト教大学
名誉教授
板倉 弘重氏
エバーライフ社はこのほど「年齢研究所」を設立した。年齢リスクをいろんな角度から研究するのが目的である。これを記念してプレスセミナーを開催した。茨城キリスト教大学の板倉弘重名誉教授が「老化制御について考える」と題して演述した。
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われわれの年齢は、大きく二つに分けることができる。一つは実年齢、生活年齢ともいわれる「暦年齢」。もう一つは解剖学的年齢あるいは生物学的年齢ともいわれる「身体年齢」である。
暦年齢は、誕生を起点とした暦の上での年齢である。行政サービスなど人をマスとして捉えている。死後でも生誕何年とか没後何年とか、歴史上の有名人は記念祭が開かれることが多い。
身体年齢は加齢によって変化、老化が現われる。
①血管年齢(ヒトは血管とともに老いるといわれる)
②骨年齢(骨粗鬆症になったり、ロコモティブシンドロームのように、痛みがきたり、折れやすくなったりする)
③知能年齢(精神年齢。幼いときのまんまのヒトもいれば、高齢になって子供にかえる場合もある)
④皮膚年齢(老化が進むと、ハリやツヤが失われ、シワ、シミ、クスミ、タルミが出てくる)
⑤感覚器年齢(視覚、聴覚をはじめ加齢にともなっての老化現象が出てくる)
⑥運動機能年齢(老化が進むと活動力や運動能力が次第に落ちてくる)
加齢による動脈硬化性疾患の発病状況をみてみると、20歳前後で脂肪斑がみられることがある。30歳前後で線維性肥厚が出る場合があり、40歳をこすとカルシウム沈着、出血、潰瘍、血栓、あるいはこれらの複合病変が現われる。50歳〜70歳では心筋梗塞、脳卒中、壊疽、動脈瘤が出てきてもおかしくはない。
血管は外膜、中膜、内膜とあって内皮細胞の中を血液が流れている。その内膜が肥厚し内皮細胞との間にプラークが増殖し、75%程度まで狭窄しても血流は維持されているので(無症状)、気がつかないまま脳卒中や心筋梗塞が突然起こることになる。
ヒトは生存のために環境に適応して進化してきた。飢え、感染症、捕食者への対応である。飢餓遺伝子というものが備わっていて、飢えに対しては強いのだが、過食・飽食には弱い。栄養過多で肥満—メタボ—糖尿病などの図式となってしまう。感染への対応は、まず自然免疫と獲得免疫がある。活性酸素の産生で殺菌することもできるし、発熱で防御することもできる。ヒトよりも強い動物への対応には運動能力と知能の発達が重要であった。これらがひいては生活水準の向上へとつながることになった。
細胞、組織の老化とヒトの加齢に伴う疾患の仕組みがわかってきたので、代謝の調節などで老化を制御する研究が進むことになろう。(寿)