東京慈恵会医科大学
腎臓高血圧内科 准教授
横山啓太郎 氏
日本医学ジャーナリスト協会の月例会で、東京慈恵会医科大学・腎臓高血圧内科の横山啓太郎准教授が講演した。演題は「透析のゆくえ—腹膜透析という身の丈の医療」。国内の慢性透析患者数は増加の一途を辿り現在、30万人を超えている。
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透析患者の平均年齢はこの30年で、48歳から66歳に延びている。昔であれば透析を導入しなかった70歳代の高齢者に対して、一律に導入しているためだ。その結果、患者が人生の最後を自宅で迎えることが難しくなっている。
東京では血液透析の入院施設がない。1日に4回行われるバッグ交換をはじめとして、腹膜透析は患者家族の負担が大きく、継続が難しい状態にある。そこでわれわれのグループでは、通常の交換回数を半分にして患者本人と家族の負担を減らす「低容量腹膜透析」という方法を編み出した。また、スマートフォンを活用して、問い合わせのハードルを下げることができた。
一般的に、腎臓の動きが5〜10%に低下すると(血清クレアチニン 8mg/dl以上)、腎臓の一部の働きを人工的に補う透析療法が必要となる。もちろん患者の状態や合併症によって実施時期は異なる。
日本の透析患者数は、現在30万人を超えている。国民の約500人に1人が透析を受けている計算だ。しかし、25年以上にわたって透析を受けながら、人生を心ゆくまで楽しんでいる患者は少なくない。
透析とは、血液中の老廃物や余分な水をろ過し、きれいにすることだ。血液透析(CAPD)と腹膜透析(APD)の2種類がある。
CADD患者さんの一日を見てみよう。
7時 : 透析液交換(1回目) → 午前中の仕事に就く。
正午 : 透析液交換(2回目) → 午後の仕事に就く。
18時 : 透析液交換(3回目)
23時 : 透析液交換(4回目) → 就寝。
腹膜の劣化により、8年間を目安に血液透析へと変更される。
血液透析の患者数は、各国ともに右肩上がりで増えている。日本では患者の7人に1人が透析を受けている。年間死亡率は、米国で23%、欧州は17%。それに比べ日本は9%と低く、わが国の透析の医療水準がきわめて高いことがわかる。
厚生労働省は導入基準を現在、作成している。腎機能の障害状況を3段階に分け、臨床症状を7通りに区分し、日常生活の障がい度も策定している。臨床症状では
① 体液貯留
② 体液異常
③ 消化器症状
④ 循環器症状
⑤ 神経症状
⑥ 血液異常
⑦ 視力障害
についてくわしく観察し、3項目以上に該当するものを高度(30点)、2項目を中等度(20点)、1項目を軽度(10点)としている。
患者と家族にとって一番よい透析とは何か。それは、QOL(生活の質)が保てる治療であり、生命予後がよいことだ。(寿)