東京医科歯科大学
 所 敬氏


大人も子供も、近視になる人が増えているという。ITの普及などがその原因とされている。第11回チバビジョンフォーラムでは、東京医科歯科大学の所敬名誉教授が「近視の発生と治療の可能性—小児の視力」と題して演述した。

 

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生後1か月になると、赤ちゃんはいくらか物が見えるようになる。正常な視力1・0にいつなるかというと、3歳児で67%、6歳児でほぼ100%になる。


 

文部科学省の統計によると小・中・高校生の低視力者は、この60年間右肩上がりで増えてきている。裸眼で1・0未満を低視力と言っているが、これには近視だけでなく、遠視や雑性乱視も含まれている。学童の近視は小学校4年生くらいがもっとも進み、その後次第に近視化の程度が下がっていって、2324歳で近視の進行は止まると言われてきた。ところが最近はパソコンなどの影響で「成人近視」が増えている。ある調査では、20歳代で51%、30歳代で29%、40歳代で38%も近視者がいるという結果が出ている。


 

近視の原因は2つ。遺伝要因と環境要因である。近視の遺伝子はいくつか発見されているが、単一では原因の説明がつかない。多因子遺伝と推測され、それに環境因子が加わってのことと考えられている。勉強のしすぎ、度の強すぎる眼鏡、暗い照明、視覚抑制などが環境因子だが、最近では過度のストレスもかかわっていると指摘されている。

 

 

近視を仕組みの面から分類すると、屈折性近視と軸性近視となる。屈折性とは、水晶体が膨らんだ状態が続いて屈折力が強くなり、網膜の手前に焦点を結んでしまうケースである。どちらかと言えば比較的軽い近視で、主として環境因子が関係している。軸性とは、眼軸が伸びての近視である。角膜や水晶体には問題がなく、正視と同じところに焦点を結ぶのだが眼軸が長いため焦点が網膜の手前になってしまう。遺伝因子によるもので、多くは強度の近視である。

 


近視を治したり、近視が進むのを阻止する薬は、残念ながらまだない。進行をやや遅らせるという程度の薬が、外国で治験中である。遺伝子要因はどうしようもないので、環境要因を改善して、近視の増大を防がなければならない。目を近づけての作業、ストレス、照明、ボケ像(ゴーグルなどによる視覚抑制)などは要注意で、なんとかコントロールする工夫が必要である。


(寿)