コンパニオン体外診断薬に差し込む光明 個別化医療の時代到来で 2012.10.19



国立がん研究センター中央病院
乳腺・腫瘍内科長
藤原康弘 氏

 「個別化医療はどこまで可能か?」のテーマの下、日本臨床検査薬協会と米国医療機器・IVD工業会がメディアセミナーを開催。内閣官房医療イノベーション推進室次長で、国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科長の藤原康弘氏が、「臨床現場から見たコンパニオン診断の運用とインフラ整備に関する課題」と題した講演をおこなった。

◇◇

 コンパニオン診断薬とは、バイオマーカーの検査薬のこと。医薬品の効果予測・安全性予測・用量最適化を目的としている。

 医療科学の進歩により、患者の遺伝子やタンパク質などのバイオマーカーを医薬品の投与前に調べることで、患者一人一人にあった治療法や医薬品を選択することができるようになった。これを個別化医療という。個別化医療は今後、医療の質と安全性を向上させ、医療財源を効率的に運用するためにも、ますますの普及が期待されている。

 米国FDAのガイダンス(案)によると、コンパニオン診断薬は「医薬品の安全で有効な使用に必須の情報を提供する体外診断薬」と定義づけられており、その要旨として次の3点が上げられている。
 

 ・「効果が期待される患者」の特定
 ・「重篤な有害事象のリスクが高い患者」の特定
 ・「用法・用量」の調達

 日本国内で承認されている、がん領域における分子標的薬は、抗体医薬で8品目、低分子化合物12品目の計20品目だ。その内訳を見ると、米国12品目・スイス3品目・ドイツ2品目・英国2品目で、日本は1品目となっている。コンパニオン診断薬を用いた分子標的薬によるがん治療は、1990年代末から始まっている。

 バイオマーカーの臨床応用が徐々に普及してきたこともあり、治療方法やその効果に対する検討も行われ始めている。

 いくつかの遺伝子の発現状況より近年、予後予測が試みられている。たとえば乳がんでは、再発しないと決まった場合、抗がん剤を投与しないことになっている。

 血栓溶解剤のワーファリンを投与する際、遺伝子検査が意味を持つのは、白人で40%、アジア人で24%程度だ。加えて、1錠で効く人もいれば、6錠飲まないと効かない人もおり、安定していない。したがって、基礎研究者が重要視する生物学的真実が臨床で役立つかどうかというのは、次元の異なる話だ。

 個別化医療やゲノム医療の時代が到来した現在、創薬開発時のみならず、診療においてもコンパニオン体外診断薬が必須となっている。しかし、「保険点数が低い」という問題点が残されている。いわゆる2000点問題(2万円)である。しかし最近、1万点という高い薬価が認められ、光明が若干差しこんできた。

 検査が標準化されていないこともあり、検査結果のバラつきをどうするかが今後の課題といえる。遺伝子検査に関わる実施機関の認証制度を確立することが求められている。(寿)