いよいよ21日の日曜日、参議院選挙の投開票が行われる。与党の自民・公明は改選前同様、非改選議席と合わせた全体で、過半数維持が確実と予想されていて、野党ではあるが「改憲勢力」の維新と合わせ、改憲発議に必要な3分の1議席を維持できるかどうか、というラインの攻防になると見られている。そんな与党の優勢が揺るぎなく見えるせいか、有権者の関心は高まらず、低投票率になると見込まれている。


 ネットの雰囲気を見ていると、そこそこ熱気はありそうだし、とくに山本太郎氏率いる「れいわ新選組」を“台風の目”のように扱う記事が目立つ。しかし、こうした印象はあくまでも、特定のテーマをよく検索するネットユーザーが陥ってしまいがちな「エコーチェンバー現象」(偏った情報にばかり接し、その情報の一般性を過信する錯覚)のようである。新聞やテレビの情勢調査では、「れいわ」の結果予測は、比例区で1~2議席、という程度にとどまっている。


 そんな今ひとつ盛り上げに欠ける選挙だが、次週の“答え合わせ”のため、とりあえず各誌の「議席予測」を見ておこう。週刊文春は先週号に予測記事があり、「自民55+公明14=69議席。非改選議席と合わせ過半数ライン123を超える139議席となり、三分の一ライン164に対しては、維新の予測議席8+非改選議席6=14と合わせても153議席で、届かない」という見通しになっている。


 週刊現代の予測は、自民56、公明13と微妙に異なるが、合計の69は同じで、維新の8も同じだ。週刊朝日(先々週号)は3人の識者に、自公52+14=66、56+14=70、55+14=69とそれぞれ占わせ(維新の予測は9、8、8)、非改選も含めた3党全体で計151~154議席という見通しを出している。


 新潮とポストに予測記事は見当たらず、サンデー毎日だけが自公61+14=75、維新10、つまり非改選との合計でトータル161と突出した数字を出しているが、それでも自公過半数ライン123よりも上、3党計3分の1ライン164よりは下、という点で、他の雑誌と変わりはない。


 というわけで、週刊誌を横断して最小、最多の予測を比較してみても、意味のある違いにはならず、やはり今回の選挙は面白みに欠けるようだ。投票率が下がってしまいそうなのも、無理のないことなのかもしれない。


 今週の週刊新潮は、朝日新聞が7月9日付1面で、ハンセン病国家賠償請求訴訟で国が「控訴方針を固めた」という誤報を出した問題で『「ハンセン病家族訴訟」大誤報の舞台裏』といういつもの朝日叩き記事を載せている。で、この記事が言うには「朝日社会部が『控訴断念』という正しい情報を得ていたのに、政治部が“安倍憎し”で突っ走り、失敗した」そうである。


 しかし、よく読むと、「社会部は正しい情報を得ていた」というのは、うっすらとした“事情に通じた政府関係者”の話で、「安倍憎し云々」という“背景説明”に至っては、コメントした“識者”の想像でしかない。もちろん誤報は批判に値する失策だし、速さだけを競う“前打ちスクープ”はそれ自体、無意味だと私は考える。


 それでも、新潮記事の結びにある《事実よりも(安倍首相への)憎悪が優先》したというこの件への決めつけは、彼らの大好きな言い方を借りれば、それこそ“ブーメラン”になるのではないか。新潮担当者の脳裏に「自分が今、書いている原稿も、“事実より憎悪優先の決めつけ”では?」という疑問は浮かばなかったのか。そのことが素朴に不思議である。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。