木村情報技術株式会社

代表取締役

木村隆夫氏


　2012年11月、木村情報技術株式会社が東京都日本橋に動画配信スタジオをオープンした。


　同社は、佐賀県に本社を構え、製薬メーカーや教育機関など医療業界・医療機関に向けた講演会等のライブ配信サービスを提供している。


　撮影スタジオというと、無造作に録音・録画機材が並べられた殺風景な部屋を想像するかもしれないが、同社が提供するKIT STUDIOはこれまでの撮影スタジオの常識を覆す様相を呈しているという。一度実際に見てみたいと思い、早速取材に伺った。


　スタジオは近代的なビルのワンフロアにある。

　東京駅から徒歩圏内、地下鉄の人形町や日本橋など4駅が利用出来てアクセス抜群だ。

　そんな好立地だが、ビルはメイン通りから一本奥まっているのでほどよく落ち着いた雰囲気である。

　エレベータで二階に上がると、ライトにやわらかく照らし出されたロビーが広がっていた。

　内線電話はシンプルでスタイリッシュ。青山あたりのおしゃれなインテリアショップに置いてありそうだ。“ハイクオリティーなライブ配信スタジオ”への期待感が高まってくる。


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　通されたのは応接室。

　部屋に入ってすぐに、テーブルにあしらわれた彩り鮮やかなプリザーブドフラワーが目に飛び込んできた。医師をはじめとする演者の緊張をほぐすための心配りだろうか。アレンジメントを眺めていると取材への緊張感が和らいでいくのを感じた。

　ほどなくして、本日のインタビュイーであり、木村情報技術株式会社代表取締役の木村隆夫氏が現れた。


　柔らかな笑顔が魅力的な木村氏は、東京生まれ、薬学部出身で薬剤師の資格を持つ。

　18年間の製薬メーカー勤務を通し、200回以上の講演会やセミナーなどの企画・運営を経験。「自分で作ったものを売りたい」との思いから、会社合併時に早期退職し起業した。


「起業のときITを扱うことは決めていました。こんなことをしたら便利になる、喜んでもらえるというアイデアは次から次に思いつくので、軌道に乗るまでは色々なことに挑戦しました」

と木村氏。ただ、それにはひとつ問題があった。


「アイデアを具現化するためのITの知識を持った人がいなかったんです。7年前は今ほどITが盛んではなかったし、“佐賀”という制約があったのでなおさら難しかった」

と、当時を振り返る。

　難航したITのスペシャリスト探しだったが、木村氏は佐賀県のある大学教授を通して、とうとう探し求めていた人物と知り合うこととなった。

　この人物こそが、現在、木村情報技術株式会社で木村氏のパートナーを務めている橋爪康知氏である。


　木村氏の「医療業界の知識」と橋爪氏の「IT実現力」が佐賀県で出会い、この出会いから医療分野にITを届ける現在のビジネスモデルが生まれた。


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　スタジオの第一印象は、とにかく広い。

　右手に“クロマキー合成”という映像合成のために使用する緑色の垂れ幕のようなものがあり、正面に収録機材一式が置かれている。

　残りの広々としたスペースは用途によってアレンジし放題。圧迫感がなく開放的な雰囲気で、たしかにこれまでの“スタジオ”とはだいぶ異なる趣だ。


　収容人数を尋ねると、


「机を並べて視聴者がその場で受講するというスタイルで、30〜40名くらいですね」


　と木村氏。


「机は自由に配置できますから、様々な用途でご利用いただけます。たとえば、今申し上げたような演者と観客数十名のセミナー形式、発言者が数名いるようなシンポジウム形式などです」



　映像の見せ方もバリエーション豊かだ。

　ただ、淡々と演者を映し出すだけではなく、テレビの情報番組のように演者とスライドを同時に、あるいは交互に映し出したり、専用のタッチペンでスライドへの書き込みをすることも出来る。こういった躍動感にあふれた映像を高画質でリアルタイムにライブ配信することを可能にしたのが、同社が提供する『3eLive』(http://www.k-idea.jp/3e/liveseminar/index.html)だ。


　しかも配信映像やアクセスログなどのデータは、事前打ち合わせから動画データの納品までのサービスを一社で提供しているため、翌日には受け取ることが出来る。

　また、急な依頼でも翌日に撮影・動画配信することも可能だ。同社が提供するワンストップサービスならではの強みだ。


「クライアント様にストレスのない迅速なサービスを心がけています。

　そのため、私たちはしばしば徹夜仕事をすることになりますが、クライアント様に120%満足して頂き、笑顔になって頂くことが、私たちが最もやりがいを感じる瞬間であり、何よりの喜びでもあります」


　KIT STUDIOではゲストの医師向けの飲食物のケータリングサービスも充実しており、そのための控室ももちろん完備している。

　これらのサービスに加え、医療業界のニーズを熟知した同社ならではのサービスは、ケータリングのメニューのセレクトや出し方など細部への心配りだ。


「弊社はIT企業でありますが、技術面はもちろんのこと、アナログ的な人を介するサービスやサポートを充実させることに、特に力を注いでおります。

　例えばお医者様へのお話の仕方、タクシーの呼び方など、お見積りには見えてこない細かなことに対する心配りを常に大切にしてまいりました。こういったひとつひとつの努力をご利用頂いている製薬メーカー様などに認めて頂き、評価を頂けているのではないかと思っております」


　同社にはすでに来年のスタジオ利用の依頼が殺到しているという。

　11月にKIT STUDIOをオープンしたばかりだというのに、すでに同スタジオだけでは対応しきれないほどの予約が入っており、なんと、年明け早々の2013年1月に大阪と東京に新しいスタジオをオープンする。


「起業してから3年ほどは思うように仕事をとることができずに苦しかった時期もありました。一度は資金が底をつき、もう駄目かもしれないと思ったこともあります。けれど人の縁に恵まれてその後なんとか黒字に転じ、今に至っています」


“あのとき、あの人に出会っていたから。”


　東京ではなく佐賀での起業をアドバイスしてくれた恩人。

　佐賀で橋爪氏との出会いの機会をくれた大学教授。

　そして、相棒の橋爪氏。

　毎日がその連続で、日々、人との出会いの大切さを噛みしめている、と木村氏は語る。


　今後については、


「社内の若い世代を育成し、佐賀の地から、東京や大阪から世に貢献できる人材を輩出したいです。そして、人にもっと喜んで頂けるような新しい仕組みを作り、具現化していきたいですね」


　と、力強く語った。


　誰もまだ足を踏み入れたことのない“ブルー・オーシャン”を自らの手で見つけ出し、新たな市場を作り出していきたい。


　木村氏の言葉には気迫がみなぎっていた。


◇◇◇


『目を離せない患者がいる』『スタッフの数が足りなくて講演会や学会に参加できない』。
木村情報技術株式会社が提供する動画配信技術は、今まで様々な理由で学びの機会を失っていた医療従事者に、学びのチャンスを与えてくれる。
この技術が広く用いられるようになり、すべての医療従事者が平等に情報収集を出来る日が1日も早く訪れるよう願っている。(育)


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木村情報技術株式会社

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