後発医薬品の台頭などにより、今年2月に発表された第3四半期決算では国内売上高が前年比40%減(560億円)となった、エーザイ(東京・文京)のアルツハイマー型認知症治療薬、アリセプト。同社の内藤晴夫社長は7日に開催された記者懇談会で、パイオニアブランドの矜持を大きくアピールすることで現状打破につなげたいとした。発言要旨は以下のとおり。


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 現在、日本国内の認知症患者は300万人といわれている。治療を受けているのは、そのうちの100万人に過ぎない。残りの200万人はいまだ潜在化している状況だ。


 製薬企業、専門医、そして介護職員の仕事量が増加していることからも分かるように、国内の認知症薬市場は、決して成熟しているとはいえない。それゆえ、アリセプトの後発品に市場を席巻させるわけにはいかない。国内での販売にわれわれがこだわるのは、日本の認知症薬市場を育成していくのは、パイオニアブランドを持つ、エーザイしかいないと考えているからだ。われわれは何をしなければならないのか—— こう考え続けることが、今後のアリセプトの生き残りをかける肝や幹となっていくだろう。

 この10年間で認知症医療は進歩した。早期の診断・治療を行えば、症状回復の可能性が高くなる、ということが分かってきた。また、その重要性も認識され始めてきた。アリセプトを発売した1990年代終盤には、誰もこんなことになるとは想像していなかった。当時は、医師もアルツハイマーの診断をうまくできず、問診時間も長かった。現在では、早期の診断・治療によって、QOLを高めることができる。


 新たな患者を医療の場に導くために、患者自身が認知症を疑った際、どこに行けば指南を受けることができるかを案内するホームページも作った。ここでも第一選択をアリセプトに導いていかなければならない。パイオニアであるアリセプトだからこそできる。後発品はアリセプトの代わりになることはできない。

 国内外19のダブルブラインド試験で裏打ちされた薬剤、また、わが国で唯一、軽・中等・高度のアルツハイマー型認知症に適応した薬剤は、アリセプトしかない。効果が54週にわたり持続するのもアリセプトのみ。だから、第一選択でアリセプトを使ってもらうのは、当然のことといえる。アリセプトの服薬継続率も向上させていく。


 患者のためを思い、エーザイはヒューマンヘルスケアを実現させていき、それをやり抜くつもりだ。後発品にぜったい譲り渡すことはできない。そういった決意を今、新たにしている。

 だいぶ興奮しながら話してきたので、喉が枯れてきた。(会場笑い)


 また、スタンダードレジメン(計画書)を確立するための臨床研究も、全国津々浦々でしっかりと取り組んでいく。


 後発品にはない、ドライシロップ製品も発売した。大手介護関連企業とのコラボも今後、注力する。