米国研究製薬工業協会
在日執行委員会委員長
アルフォンゾ・G・ズルエッタ氏
米国研究製薬工業協会
会長
ジョン・C・レックライター氏
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジョン・C・レックライター会長(イーライリリー・アンド・カンパニー会長兼社長兼最高経営責任者)と、アルフォンゾ・G・ズルエッタ在日執行委員会委員長(日本イーライリリー社長)が1日、都内で会見し、外資系製薬企業の研究施設が日本から次々と撤退している現状をふまえて、今後の対日投資について発言した。また、混合診療の全面解禁反対などが叫ばれている、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉についても言及した。発言要旨は以下のとおり。
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対日投資について
ズルエッタ氏 研究に対する投資はグローバルレベルで統合されつつある。これまでは、研究「施設」に関することばかりが取り上げられてきたが、実際のところ、もっと包括的な形で取り組む必要がある。日本の研究施設もそういった前提の中で活用することになる。これからは価格の再算定によるプログラムが重要となるので、日本への投資を奨励しようと考えている。PhRMAでも2年前、日本国内の内外資企業を対象とした調査を行い、制度改革 —特に、薬価制度や革新的製品に対するプレミアムの付与— に応じる形で、臨床開発に関する投資を「もっと日本に」という声が出ていることが分かった。課税面に関しても同じことがいえる。この調査結果の更新を兼ねた奨励を今後、進めていきたい。日本に研究施設を持ってこようとすると、やはり、安定した薬価環境、プレミアム制度の恒久化が必要となる。PhRMAは日本政府に対してこれらを提言していきたい。
レックライター氏 イーライリリー・アンド・カンパニーでは50億米ドルを研究開発にかけている。そのうちの半分未満が施設に対するものだが、それ以上の投資が、特に臨床研究の分野で、全世界のリリー以外の研究者のために、基金として使われている。現在、薬剤の開発を世界同時で行っているが、基礎研究においても、米国・日本・ヨーロッパで同時に進めていきたい。これは、より多くの臨床研究が日本で行われ、そのプロセスにおいて、より多くの日本人がかかわることを意味している。
シンガポール、アイルランド、いくつかのヨーロッパ諸国、中国などの国々は、確かに競争力を増し、研究にとって、より魅力のある国へと変わってきた。しかし重要なのは、長期的な視野を持つことだ。日本は今後革新するためにも「エコシステム」(※)を打ち立てるべきではないか。そうすれば、より多くの投資や研究を国内へ呼び込むことができる。
TPP交渉について
ズルエッタ氏 日本政府の意思決定が第一。業界団体として、私たちがこの議論で常に強調してきたのは、「日本の国民皆保険をサポートしている」ということだ。日本の医療制度は世界でもっとも優れている。それ以外の局面については、日本やアジア地域の知的財産の保護しつつ、より合理的で透明性のあるルールを設け、実践していかなければならない。世界中で開発される最新の医薬品に対して、患者が自由にアクセスできるようにすることが重要だ。
※ 複数の企業が互いの技術を生かしながら、業界を超えてパートナーシップを組んでいく仕組み