参天製薬

専務執行役員 日本・アジア事業管掌兼医薬事業部長

古門貞利氏


 21日、都内で開催された眼科用VEGF阻害剤「アイリーア」の発売発表会で、参天製薬株式会社(大阪・東淀川)の古門貞利専務(日本・アジア事業管掌兼医薬事業部長)が、「日本の眼科薬市場の現状とアイリーアを通した治療貢献」と題して発表を行った。「アイリーア」は、独バイエルが米リジェネロンと共同開発し、国内の医療用眼科薬市場でシェアNo.1の参天製薬が国内で販売を行っている。発表要旨は以下のとおり。 


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 国内の眼科薬市場は薬価ベースで約2550億円。年平均3〜4%で堅調に成長している。中でも網膜疾患領域は、昨年度の段階で247億円と、成長率・市場規模ともに眼科領域ではナンバーワンであり、治療ニーズ・評価も高い。この領域で昨年11月、バイエル薬品と弊社でアイリーアを上市した。


 12年度4月から12月までの第三四半期を見ると全体の医療用医薬品は1%弱の成長にとどまっているが、眼科薬市場は5%以上の延びを見せている。中でも網膜疾患の市場は24〜25%と成長著しい。今年度には300億円程度の市場規模に到達するだろう。


(九州大が福岡県久山町で1961年から継続的に行なっている疫学調査の)久山スタディーによると、加齢黄斑変性の患者は69万人と推計されている。しかし実際治療を行なっている患者は全国1300施設で、4万人しかいない。視力にも影響する重症疾患にもかかわらず、加齢黄斑変性は未治療の患者数が多いといえる。


 グローバルなKOL(影響力のある医師)を有し、網膜専門医を中心に営業活動を行っているバイエル薬品と、一般医を広くカバーする弊社がともに治療実態を把握し、かつ、病診連携を深めていくことができれば、未治療患者への貢献を行うことができる。


 目の疾患を早期発見することは、視力低下や、緑内障・加齢黄斑変性を始めとする失明原因となる疾患の進行の抑止につながる。また、高血圧や糖尿病などの全身疾患の早期発見にもつながる。眼底で唯一可視化できる動脈や静脈の動きをよく調べることで、患者が症状を自覚する前に、内科医や循環器医などへ診察を促すこともできる。


 在日米国商工会議所が発行する「予防医療、早期発見を通じた疾病の経済的負担軽減のための政策提言」によると、日本の成人の約82%は「視力検査・眼の検診」経験しているものの、「眼科医による眼科的検査」を受けているのは28%にすぎない。この値は中国(25%)やシンガポール(28%)と変わらない。欧米(例・アメリカ74%、イギリス77%、イタリア74%)と比べると極めて低い。日本は眼科の敷居が高いのだろうか。いや、全身疾患の早期発見に寄与するということが知られていないからではないか。


 100歳をこえた著名な先生(医師)が書いていた文章を紹介する。「寿命が延びても目が見え、耳が聞こえなければ、生きていてもしょうがない。感覚が命という感じが強くなっています。内科、外科は寿命を延ばしますよ、でも眼科は生き甲斐を与える。それがクオリティオブライフですよ」。こういった現在の超高齢者の立場・目線・気持ちを認識して、われわれも早期治療に貢献していきたい。