みなとみらいクリニック
理事長
田中 俊一氏
今回取り上げるテーマは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」。寝ているときに呼吸が止まってしまうこの病気の怖いところは、心疾患、昼間の眠気といった病態以上に「自覚症状がほとんどない」ことに尽きる。いびきや寝ているときの無呼吸状態にあるときの自覚症状はない(あれば自分のいびきで目が覚めるはずだ)。寝苦しくて目が覚める、熟睡感がない、夜中にトイレに起きる……といった“症状”も、「今日は疲れていたから」「まぁいつものことだし」と見過ごされてしまうことが多いだろう。
そんなSASの実態について取り上げた市民公開講座「睡眠時無呼吸症候群とメタボの怖い関係!!」(みなとみらいクリニック主催)は、みなとみらいクリニックの田中俊一理事長による講演「睡眠時無呼吸症候群とメタボリックシンドローム」と、R-1ぐらんぷりで話題をさらった“メタボ芸人”芋洗坂係長(小浦一優氏。同氏の所属する劇団のホームページ:http://www.ajasun.com/tac/index.html)のSAS実体験を聞くという、一風変わったセミナーとなった。
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みなとみらいクリニックの田中俊一理事長の講演は、SASに関するごく基本的な知見を、誰にでもわかりやすく解説するというスタイルで行なわれた。その要旨は次の通り。
●睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、現役世代の男性に多い。
●BMI(ボディマス指数)を見ると、SAS患者にはBMI値の高い人が多い。
●SAS患者は健常人に比べ、心血管死、非致死性心血管イベントとも多い。
●SAS患者の3人に1人は12年以内に何らかの心疾患を起こす可能性がある。
●いびき、寝相が悪い、夜中に2回以上トイレに行く、妙に寝つきが良い、若い頃より体重が増えた、血糖値・血圧が高い……もし、自覚があればSASの可能性がある。
30分弱の講演後、キューティーハニーのテーマとともにステージに現れたのが芋洗坂係長。ダンスと替え歌を交えたお笑いミニライブの後、司会進行を務める女性をインタビュアーにSASの実体験を語った(「私も息が止まっていました! 芋洗坂係長の睡眠時無呼吸症候群体験記」)。
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インタビュアー(以下=イ): 病院に行くきっかけはあったのでしょうか?
芋洗坂係長(以下=芋): 初めは糖尿病の診察のために病院に行ったのですが、その際に「SASもあるのではないか?」と言われまして、改めて呼吸器外科の診察を受けました。そこでSASの検査をした結果、1時間で60回無呼吸、脳の酸素が70%以下になっていると診断されまして……。先生からは「最重症ですよ」と言われました。
イ: SASであるという自覚症状はなかったんですか?
芋: 寝ているあいだはわからないんです。周りの人から言われるんですよ。以前、撮影で日光に行ったときのことです。大部屋で8人くらいで寝ていたのですが、夜中に電気がついたので、パッと目が覚めたんですよ。そうしたら僕を囲むように顔が集まっていて、「えっ、えっ、自分ですか?」と。そのうちに誰かから「鼻ちょん切るぞ!」といわれましてね(笑)。「いや、鼻をちょん切ったところでいびきが出なくなるわけでも……」と思ったんですけど。まぁ、そんな怖い体験もしました。
イ: いつ頃からいびきをかくようになられたのでしょう?
芋: 体重が80kgを超えたあたりからでしょうか。いまは100kg以上ありますけど、やっぱり100kg以上ないとプロのデブとはいえないですから(笑)。
イ: 痩せ型の方もふくよかな方も、治療法は同じなのですか?
みなとみらいクリニック・田中俊一理事長:
C-PAP療法といいまして、寝るときにマスクをつけていただくことになります。根本治療としては食事療法や運動療法があるのですが、すぐに効果がでるものではありません。すぐに効果があるのはマスクですね。C-PAP療法に使うマスクはこのようなものです。
(参考:http://www.teijin-pharma.co.jp/zaitakuiryou/cpap/cpap03_02.html=帝人ファーマのサイトより)
防塵マスクにダクトがついているようなものですね。装置からチューブを通して鼻につけたマスクに加圧した空気を送り、その加圧によって気道の通り道を広げることで、寝ているときにもちゃんと呼吸ができるようにする方法です。
イ: マスクをつけていると寝ているとき気になるように思えるのですが?
芋: それが意外と気にならないんですね。最初は気になるかな、と思ったんですけど。しかも、鼻からの空気が逃げていくときに腕とかにあたるんですが、この風が結構涼しかったりするんですよ。
イ: 治療してよかったと実感されたことを教えてください。
芋: やりはじめた翌朝、すぐに効果がでました。目覚めがスッキリで、夜中にトイレに起きることもなくグッスリ眠れましたね。以前は、オートバイを運転しているときに眠くなることもあったのですが、これも全くなくなりました。
イ: ダンスのキレもアップしたのでしょうか?
芋: それもありますし、何より集中力がアップしましたね。ホントにこれ、使い出してすぐに効果が実感できたので、こんなわかりやすいモノはないですね。
実はこれをつける前にアパートに住んでいたのですが、隣が大家さんだったんですね。
で、大家さんに「いびきがうるさいからでていってくれ」と言われまして。家賃滞納でもなくいびきが理由で。そのときの不動産仲介会社の方がコレを使っている方で、大家さんに「いびきはしょうがないでしょう」と説得してくれまして。
実は一度、「自分のいびきはどれくらいのものなのか?」を調べて見ようと、寝る前に録音したことがあるんですよ。自分で録音ボタンを押して寝たわけです。翌朝、録音を聞いてみたわけですが……。だいたい、最初の10〜20分くらいは何もなくて、しばらくしてからいびきが聞こえてくるのかな、と想像していたのですが、実際には再生ボタンをガチャっと押して10秒くらいで「グァァァ」っと聞こえてきまして(笑)。編集も何もしていないのに、「えっ!」と思いましたよ。
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みなとみらいクリニックによると、SASの簡易検査は300円程度、CPAP療法の費用は月額5000円程度(いずれも健康保険3割負担の場合)という。もし、心当たりがあるのであれば、これを機会に一度検査を受けてみても良いのかもしれない。(有)