イワサキ眼科医院
岩崎 直樹氏
ジョンソン&ジョンソン社のメディアセミナーで、大阪のイワサキ眼科医院の岩崎直樹先生が「上手に“目の乾き”と付き合うために——対策と予防」と題して講演した。
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オフィスワーカーで、目の疲れを感じない人は、極めて少ない。パソコン業務が増加し、人員削減による一人当たりの業務量が増加しているからである。もっとも、目を使うのだから、疲れるのは当たり前ともいえる。一晩寝て治るのは「眼疲労」である。翌日まで持ち越す、あるいは週末に休んでやっと治るようなら「眼精疲労」である。これは病気であり、治療の対象となる。
眼精疲労の症状は、
①目がしょぼしょぼする
②目がゴロゴロする
③目が乾く
④目が充血する
⑤目の奥が痛い
⑥肩こりがひどい、などである。
また不快な「目が乾く」感じというのは
①目が乾く
②しょぼしょぼする
③ゴロゴロする
④目が疲れる
⑤充血する、である。
「眼精疲労」の大部分は、実は「目の乾き」とまったく同じ症状であり、この両者はまさに表裏一体であるといえる。
目は油層と液層(水層、ムチン)の2層構造で安定した膜をつくり、角膜の表面を保護している。一定量の涙(水分)が常に保たれていることが大事であり、瞬きのたびに層構造を作り直している。瞬きの回数が減ると層構造を保てなくなり、涙がきれてしまう。ドライスポットができてしまう。
オフィスワーカーを調査したところ3分の1の人にドライアイ(涙液減少症)がみられた。コンタクトレンズの使用者は、涙液の蒸発が通常より盛んなため、より乾きやすい状態となっている。20〜30歳代の女性のコンタクトレンズ使用者に、目の乾燥を訴える人が多い。ドライアイを悪くする3つの「コン」がある。パソコン、エアコン、そしてコンタクトである。パソコン使用時は、瞬きの回数が減少する。通常は1分間に20回の瞬きをするのだが、パソコン業務の時は5〜10回となる。エアコンで湿度が低く、かつ温度が低いと、涙はもっとも不安定となる。コンタクトレンズも涙が不安定になり、乾燥しやすくなる。
コンタクトレンズを止めざるを得なくなる合併症がある。酸素不足、アレルギー性結膜炎、そしてドライアイである。内皮減少や血管侵入、搔痒感や乾燥感などで、装用を中止しなければならなくなる。
「目は心の窓」といわれる。また「目は人間の眼(まなこ)なり」と落語のマクラに使われる言葉もある。いずれにしても大事な器官だから、ということで5項目の留意事項が挙げられている。
①目の疲れを防ぐ=定期的に休憩をとること。50分やったら10分休む。中学校の時間割と同じである。
②瞬きを意識的に増やす=とくに完全瞬目を心がける。しっかりと目を閉じる、一番下まで目をパッチンとすることである。
③加湿器を使う=ポータブル加湿器(マイ加湿器)がおすすめである。
④人工涙液型の点眼を使う=コンタクトレンズの上から使用できるものがいい。薬局で薬剤師さんに相談する。ハードレンズだけOKのものもあるので要注意。「クール」などメントール入りのものは避ける。頻回に使うなら防腐剤抜きのものにする。1日に6回以上差すなら眼科医に相談する。
⑤コンタクトレンズの種類を考える=乾きにくく、酸素透過性の高い「シリコーンハイドロゲルレンズ」がいい。次世代のレンズといえる存在である。うるおい成分を含むソフトコンタクトレンズである。
(寿)