東海大学医学部
専門診療学系小児科学教授
望月 博之氏


 アボットジャパンのメディアセミナーで、東海大学医学部専門診療学系小児科学の望月博之教授が講演した。演題は「小児の夜間呼吸器症状における現状と対策」。

 

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 呼吸器の疾患の3代症状は咳嗽(ガイソウ)、喘鳴、呼吸困難である。ここでは「喘息」について説明するので喘鳴と咳嗽をとりあげる。

 

 呼吸器系疾患の年齢別総計をみると、0〜4歳が最も多い。ついで5〜14歳、75〜84歳、85歳以上、65〜74歳の順となる。

 

 喘息とは「笛性喘鳴を伴う呼吸困難を繰り返す疾患」ということができる。この症状は起動が狭窄するために生じ、原因は起動の慢性炎症が考えられる。炎症の原因としては、アレルギーや感染症がある。

 

 児童生徒全体(約1300万人)のアレルギー疾患有病率をみると、アレルギー性鼻炎9・2%、喘息5・7%、アトピー性皮膚炎5・5%、アレルギー性結膜炎3・5%、食物アレルギー2・6%、アナフィラキシー0・14%となっている。世界的にみてもアレルギー、白血病の児童などの数は増えている。

 

 小児の喘息の発症年齢は3歳までが圧倒的に多い。発症と悪化の要因は、ダニやハウスダストなどのアレルゲン、呼吸器感染症のウイルス、タバコの副流煙や室内の空気汚染である。群馬大学の小児科で、小児の慢性咳嗽の臨床的分類を行っている。


 広義の慢性咳嗽=原因疾患が十分に推定できる。原因となる疾患や治療の有無に関わらず、8週間以上咳嗽が続く。

 

 狭義の慢性咳嗽=明らかな原因疾患がみられない。治療の有無に関わらず8週間以上咳嗽が続く。喘鳴、呼吸困難の既往がない。肺機能、胸部レントゲン写真は正常。

 

 咳喘息=狭義の慢性咳嗽で、気道過敏症の亢進が認められる。つまり気管支が収縮しやすくなる。

 

 07年に未就学児の呼吸症状の実態を調査した。群馬大学と三重病院である。最近1年間の呼吸器の症状は?という問いで1168人の回答を得た。ここでは咳をはじめて分けてみた。コンコンと乾いた咳が出る(痰はからまない)73・7%、ゼロゼロといった痰がからんだ咳が出る64・3%、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸をする(喘鳴)19・2%、鼻水・鼻づまり94・8%、ひとつもなし2・7%。症状が悪化する季節は9月〜4月でピークは2月となっている。困る症状は、夜眠れない、食欲低下、朝方目が覚めるなどである。まとめとしては次の3点をあげることができる。 

 

①小児の呼吸器は成人と比較し、喘鳴、咳嗽を起こしやすい状態にある


②小児の慢性咳嗽では、喘息、鼻疾患が病因である可能性が高いため、これらを念頭に鑑別を進める


③喘鳴や咳嗽は夜間に多くみられることから、患児、家族のQOLを考えた夜間の症状コントロールが重要である。


(寿)