道玄坂糸井眼科医院
院長
糸井 素純氏
ジョンソン・エンド・ジョンソン㈱のビジョンケアカンパニーは、世界初の1日使い捨て次世代素材シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズの製造販売承認を取得した。商品名は「ワンデーアキュビュートゥルーアイ」である。道玄坂糸井眼科医院の糸井素純院長が「期待とその可能性」について演述した。
◆ ◆
コンタクトレンズは、ハードとソフトに分けられる。ハードは水分をほとんど含まない、かたい素材でできている。ソフトは水分を含んだやわらかい素材でできている。
そして交換頻度によって4種類に分けられる。
①1日使い捨て(毎日新しくするから、レンズケアは不要)
②2週間交換型(毎日装用し、はずすたびに洗浄・消毒をして再使用)
③定期交換型(1〜3か月のサイクルで交換する。毎日の洗浄・消毒はもちろん、定期的なたんぱく除去も)
④従来型(レンズの寿命がくるまで使い続ける寿命は1年〜1年半。毎日の洗浄・消毒と定期的タンパク除去)。
コンタクトレンズ(CL)の酸素透過性を左右する因子は、レンズの厚さと素材である。厚いと透過性は悪くなる。素材も従来のものは不十分である。とくに強度の近視や高度の角膜乱視の場合は悪い。新素材のシリコーンとハイドロゲルは、たとえてみると油と水のようなもので、混ぜると濁ってしまう。それを透明化することに成功した。透気性と含水性(親水性)が1つになって高酸素透過性のソフトCLになったというわけである。これにより、さまざまなCL眼障害が減少し、長時間装用の目への負担を軽減し、乾燥感も軽減、CLへのタンパク吸着を抑制できるようになった。
素材はよくなっても、一向に減少しない重症の角膜感染症がある。その原因はレンズケアを間違えているからである。感染者の半数以上がCLを入れるケースが汚染されていることが判明した。
つまり
①つけおきのみでは消毒効果は不十分
②消毒力の強い製品(過酸化水素、ヨード剤含む)でも、レンズケース内の汚染が約6割に認められた。
③通常の使用状況下(誤ったケア)では、すべての消毒剤の消毒力が低下している可能性が高い。
ソフトCLの正しいケアは、
はずす
↓
すすぎ
↓
こすり洗い
↓
すすぎ
↓
保存
↓
こすり洗い・すすぎ(推奨)
↓
装着である。
レンズケースは、
ケース内の液を捨てる
↓
流水ですすぎ
↓
流水でこすり洗い
↓
自然乾燥。1か月に1度の交換(推奨)。
レンズケア用品は、は開封後1か月で使いきる(推奨)。
欧米諸国やアジア諸国での調査でも、正しいレンズケアが行われていない実態が明らかになっている。ほとんどの人が間違って理解していたり、忘れてしまったりしているので十分な指導が必要である。しかし多くのCLユーザーにとって、正しいレンズケアを励行し、それを継続していくことは非常に大変なことである。そこで1日使い捨てソフトCLの登場というわけである。
メリットは
①レンズケア不要
②レンズケース不要
③コンタクトレンズは常に清潔
④コンプライアンスがきわめて良好、となる。汚染リスクが大幅に軽減されるわけである。
新製品「ワンデーアキュビュートゥルーアイ」は、1日使い捨てソフトコンタクトレンズと、次世代素材シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの両方のメリットを併せ持ち、お互いのデメリットを補う究極のソフトコンタクトレンズである。限りなく裸眼に近づいたということができる。(寿)