東京歯科大学
副学長
井出 吉信氏


 日本私立歯科大学協会(中原泉会長)が、第一回歯科プレスセミナーを開催した。東京歯科大学の副学長で解剖学講座主任教授の井出吉信先生が「超高齢社会における歯科医師の役割—新たな歯科医学教育」と題して講演した。

 

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 日本人の死因順位は、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患ときて、第四位に肺炎がきている。統計を見ると60〜64歳から増えはじめ90歳では一〇万人対二八〇〇人の死亡率となっている。誤嚥性肺炎が原因である。口腔・咽頭にはいろんな細菌がいる。胃・食道逆流の場合や、高齢になると嚥下機能が減退するし、体力・免疫力の低下をきたすからである。

 

 肺炎の感染経路は三つある。飛沫感染、血行感染、そして誤嚥性感染で、これには嘔吐や細菌がかかわっている。要介護の段階の高齢者では、気管支粘膜などの繊毛運動が低下するため、不顕性の細菌吸引が多くなる。そこで気管支炎や肺炎を起こしやすくなる。

 

 高齢になると、糖尿病、腎不全、肝不全などの基礎疾患がどうしても増えてくる。口腔内の細菌(常在菌)の層も変わってきて、病原性を有する細菌が増加する。それを誤嚥すると肺炎になるという図式である。

 

 国保施設協議会の歯科部会が行った平成11年度の調査では、要介護者の口腔内状態に問題あり、との結果が出ている。歯(歯がある者のうち)不良74%、義歯(義歯がある者のうち)不良50%、口腔粘膜不良31%、口臭あり27%、また口腔清掃の自立度は、歯磨き自立50%、一部介助17%、全介助23%、義歯清掃自立51%、一部介助14%、全介助31%、口腔機能障害は、嚥下障害24%、咀嚼障害34%、義歯に問題あり50%、口腔乾燥13%、舌苔3%であった。

 

 以上の結果からみても、感染に対する抵抗力の落ちた高齢者・要介護者は、口腔内を清潔に保つこと、誤嚥性肺炎の予防に万全を期すことが大事になってくる。

 

 食事をする際の嚥下障害となる要因がいくつかある。誰もが避けることができないのが「加齢」である。口腔・咽頭の腫瘍などによる欠損、寝たきりになっていたための筋の廃用。認知症。神経原性疾患(パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症など)。

 

 加齢による口腔諸器官の変化には次のようなものがある。歯の欠損・顎骨の吸収(咀嚼力の低下)。喉頭の位置の低下。舌・舌筋の下垂、舌運動の以上、唾液分泌の低下、口腔内感覚の低下、口唇の閉鎖不全。そこで食べ方・飲み方の機能をチェックする必要がある。

 

①口からこぼす

②食べ物が口に残る

③飲み込みにくい

④食事時間が延びた

⑤食後に声がかすれる

⑥食事中にむせる

⑦食後に咳込む

 

 最近は摂食・嚥下リハビリテーション科ができているので、学生の教育はもちろん、既卒者や看護師等のリハビリ従事者にも広げていく必要がある。(寿)