大分県立看護科学大学
学長
草間 朋子氏


 日本医学ジャーナリスト協会の月例会で、大分県立看護科学大学の草間朋子学長が講演した。演題は「特定(診療)看護師の養成教育—看護師の業務・裁量範囲の拡大を目指して」である。

 

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「ナースプラクティショナー(NP)」は、米国では16万人もいて盛んに活動している。翻訳すると「診療看護師」となるのだが、反対というか抵抗されると思われるので、仮称で「特定看護師」というようにしている。22年3月の「チーム医療の推進に関する検討会」の報告書では、次のように定義づけられた。

 

 医師の包括的指示の下で、特定の医行為を実施することができる。包括的指示とは次の四項目である

 

①対応可能な患者の範囲が明確にされていること

②対応可能な病態の変化の範囲が明確にされていること

③指示を受ける看護師が理解し得る提案の支持内容(判断基準、処置・検査・薬剤の使用内容等)が示されていること

④対応可能な病態の変化の範囲を逸脱した場合に、早急に医師に連絡をとり、その支持が受けられる体制が整えられていること

 

 特定看護師については、次のように規定されている。

 

①看護師免許を保有していること

②看護師としての一定期間以上の実務経験(たとえば五年以上)

③特定看護師の養成を目的とした課程として、第三者機関が認定した大学院修士課程を修了したこと

④修士課程修了後に第三者機関による知識・能力の確認・評価を受けたこと

 

 さらに「一定期間ごと(たとえば五年ごと)の認定更新制度の設置」も附記されている。

 

 NPは、1965年に米国・コロラド大学で始まった制度である。大学院で修士課程の教育を受けた看護師が活躍するようになった。医師と連携、協力して業務を遂行する。診断・治療ができる。医薬品の処方ができる。検査のオーダーができる。提供したサービスに対して医療費が支払われる。個人を対象にしたプライマリケアの提供が中心となる。要するに、看護モデルと医学モデルを使ったサービス、つまりケアとキュアを提供することが目的である。

 

 日本におけるNPの養成教育の輪は広がっている。平成20年に大分県立看護科学大学、21年国際医療福祉大学、22年東京医療保健大学東が丘看護学部、北海道医療大学、聖マリア学院大学と増えてきている。NP養成教育の標準化等を目指して「日本NP協議会」が設置された。

 

 看護師の裁量範囲の拡大にあたっては国民に安全で安心な医療保健サービスの提供が眼目となる。「安全」については、系統的な教育を施し、「安心」については、信頼関係の構築と制度的なシステムの確立が必要となってくる。そのためには法令の改正を目指さなければならなくなってくる。(寿)