東京乾癬患者友の会
役員
大蔵 由美氏

東京慈恵医科大学皮膚科学講座
教授
中川 秀巳氏

東京逓信病院皮膚科
部長
江藤 隆史氏


「体表に病変が現れる疾患」に対する、世間の風当たりは冷たいものだ。


 古くはハンセン病に対する傷ましい歴史があり、21世紀を迎える今の時代においても、皮膚病に対する偏見は完全に拭い去られているわけではない。

 

 「乾癬は体の表面に症状が現れることから、見た目が悪く、感染しないにもかかわらず、感染するのではないかと誤解されることがある」と多くの患者のつらい体験を代弁したのは、東京乾癬患者友の会役員の大蔵由美氏。人目が気になることから患者のQOLも低く、精神的なサポートも必要だと語る。

 

 今回取り上げる疾患は乾癬。この疾患の実態と治療の現状を報告した2つのプレスセミナー(田辺三菱製薬「乾癬治療における新時代の幕開け」。アボットジャパン、エーザイ「新クラスの治療法、生物学的製剤による乾癬患者のQOL向上」)を取り上げてみたい。

 

 東京慈恵会医科大学皮膚科学講座・中川秀己教授(アボットジャパン、エーザイ共催セミナーでの講演)によると、乾癬の日本における有病率は全人口の0.1%、患者数で見ると10万人程度と推定されているという。

 

 有病率の低さに比例してなのか、体表に病変が現れる疾患に対する“偏見”もあるのか、乾癬に対する認知度は極めて低い。

 

 今年1月に実施した乾癬の認知度調査では、「社会一般からの乾癬に対する認知度は10%に過ぎません」(中川教授)とのこと。「症状がうつる」「感染が発症原因」と見ている人が少なくないことも明らかにされた。このような「乾癬は人に移る」「一緒にプールや温泉に入ると感染するかも知れない」という“偏見”を抱いている人は思いのほか多いようだ。

 

 こうした“偏見”は完全に事実認識を間違っている。


 乾癬は感染しない。空気、飛沫、水、接触……いかなる形でも感染することはない。


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 その病態について語ったのは東京逓信病院皮膚科・江藤隆史部長(田辺三菱製薬セミナーでの講演)だ。

 

 乾癬は、皮膚は赤くなって(紅斑)、盛り上がり(浸潤)、その表面に銀白色のアカ(鱗屑)が厚く付着。これがフケのように剥がれ落ちる(落屑)という症状を起こす疾患だ。実際にどのような症状が現れるかについては、日本皮膚科学会のサイトを参照いただきたい。


<http://www.dermatol.or.jp/QandA/kansen/q01.html>

 

 人の皮膚は、厚さ0.2〜0.4mmの表皮で覆われている。この表皮は、細胞が作られてから「1カ月程度たつとアカとなって剥がれ落ちる」が、乾癬の場合は、表皮の新陳代謝が活発となるため「3〜4日でアカとなり剥がれ落ちる」ことになる。

 

 結果、鱗屑が次々と形成され、フケのような皮膚片がたくさん落ちてしまうわけだ。

 

 なぜ乾癬が起きるのか?

 

「原因はまだはっきりとわかっていません。最近に研究により病変部では表皮の異常だけでなく、<免疫系にも異常が生じ、炎症が起きている>ことがわかってきています。なお、乾癬は非感染性の疾患で、プール、風呂、接触などで他の人にうつることは決してありません」(江藤部長)という。

 

 糖尿病やバセドウ病(免疫系の疾患)が絶対に感染しないように、乾癬も決して乾癬することはないのだ。

 

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 乾癬治療にはステロイド外用剤、ビタミンD3外用剤などによる外用療法が行なわれる。適切に治療すれば効果的に症状を抑えられるが、外用剤を直接塗ることの出来ない「頭皮の症状」や、塗布範囲の広い「全身症状」の場合は治療が難しく、はかばかしい効果が上がらないという問題も指摘されている。

 

 外用薬治療がどれだけ大変なことか? 風呂上りにスキンケアクリームを上腕から指先まで隈なく塗ってみれば疑似体験できることだろう。これを全身に、かつ毎日朝晩となると……正直、気が遠くなるという方が多いのではないだろうか。

 

 アトピー性皮膚炎の治療でも問題視されているのが、この外用薬塗布の煩雑さから来る、「意図せざる治療のサボタージュ」である。内服薬であれば何年でも継続して治療できるものの、毎日朝晩1時間、全身にクリームを塗るという手間は、どんなにマメな患者をも“三日坊主”に変えてしまうということだ。

 

 乾癬治療を効果的に進めるためには、外用療法以外の治療法が必須といえる。

 

 その切り札というべき治療薬が、このほど乾癬に関する効能・効果の追加承認を受けた『レミケード』(田辺三菱製薬)、『ヒュミラ』(アボットジャパン、エーザイ)なのだ。


(続)