GEヘルスケア・ジャパン㈱が、日本で初めてのMRガイド下の集束超音波治療器(フォーカス・ウルトラサウンド・サージェリー=FUS)を新発売した。子宮筋腫の治療が切らずに行えて、患者さんは日帰りできるというすぐれものの装置である。

 

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 日本人の成人女性の4人に1人が子宮筋腫を持っているという。しかも家庭的・社会的に重要な役割を担う35歳〜50歳が筋腫人口の8割を占めていると推計されている。

 

 現在の治療法は

 

①子宮全体を取る全摘手術


②筋腫だけを切り取る核出法(いずれも開腹手術と腹腔鏡手術がある)、


③カテーテルを血管に入れて薬剤で血管を詰まらせることで、筋腫を縮小させる子宮動脈塞栓術、がある。

 

 外科療法で患者さんへの負担が大きく、術式によって1日〜2週間の入院期間が必要となる。しかも開腹手術の場合は、腹部に傷跡が残るという問題もある。

 

 FUSの器械の名称は「エクサブレート2000」で、MRI(磁気共鳴画像診断装置)とドッキングさせて治療にあたる。MRIの画像のもとに、ちょうど虫眼鏡で光を1点に集めるのと同じように、208個の発生源から出る超音波を一点に集めて、うつ伏せになった患者さんの患部に照射して、焦点組織の温度を60〜85度まで上昇させ、子宮筋腫の組織を壊死させるという方法である。治療時間は平均3〜4時間。麻酔はかけないから、手術後1時間ほど安静にしていれば日帰りも可能である。傷跡も残らない。

 

 治療計画と治療の方法は次のようになる。まず集束超音波というのは、アレイ配置の208個のトランスデューサーエレメントからの超音波ビームを一点に集束させたものである。集束超音波は、焦点で熱エネルギーに変換されて組織温度を一定時間上昇させ、この熱的効果で子宮筋腫組織を壊死させる。MRのコロナル、アキシカル、サジタル画像を用いて、子宮筋腫の周辺部位(子宮内膜、腸、脊椎、仙骨神経など)解剖学的構造を把握し、治療の領域を特定する。システムが適切な照射エネルギー、照射回数、照射スポットサイズを計算する。エネルギー照射時の集束超音波ビーム経路を確認できるので、恥骨や腸管など熱感受性の強い臓器、皮膚や後方にある神経を避けて、治療時の安全性を確保する。

 

 子宮筋腫の治療領域に集束超音波を照射している間、MRの画像データを用いリアルタイムに温度が表示される。温度グラフには照射時の最高温度が表示される。周辺組織も安全のためモニターされ、リアルタイムの解剖学的MR画像により、臓器の動きを確認しながら標的位置の調整もできる。これにより安全性を確保することが可能である。

 

 FUSは、02年に欧州で、04年に米国で承認を得ている。09年12月現在、米国で30台、欧州で29台、アジアで20台と全世界で79台が設置されている。海外での治療件数は約5500症例にのぼっている。日本では03年以降全国9施設が個人輸入している。

 

 現在のところ子宮筋腫だが、限界のある放射線と違って、FUSは無限の可能性を秘めている。乳がんの治療、がんの骨転移による疼痛の緩和、脳腫瘍の治療、前立腺の腫瘍、肝臓をはじめあらゆる臓器の疾病の治療に活用できる道が開けている。

 

 04年12月から「エクサブレート2000」を使用したFUSを実施、これまで約200例の治療実績を持っている板橋中央総合病院の森田豊産婦人科部長は、次のように話している。「メスや麻酔を使わないので体への負担が軽いのが最大のメリットである。治療中に腹部の痛みを伴う人がいるが、比較的転いし、皮膚の発赤などの副作用もきわめて稀である。入院不要で、日帰りもできる。子宮を残したい女性にとっては画期的な治療だ」。(寿)