宮川医院産婦人科
宮川 智幸院長
サンスターは「マウスアンドボディ」と銘打って、プレスセミナーを開催している。今回は妊産婦と胎児の口腔サポートがテーマで、宮川医院産婦人科の宮川智幸院長が演述した。演題は「産科医療と歯科医療の意義」。
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宮川医院は神奈川県藤沢市にある。昭和39年の開業でベッド数は4床、年間160例の分娩数である。産婦人科医1名、助産師4名。内科と小児科を併設している。
同院の基本方針6項目は次のように謳われている。
①母児の安全
②自然分娩
③完全母乳保育
④個別指導
⑤カウンセリング
⑥インフォームド・チョイス。
なぜ妊娠中の口腔ケア、つまり歯科医療が重要か、というと妊婦さんからの相談が多いからである。
お産をする前に、虫歯を治療したい。
つわりがひどくて、歯磨きが思うようにできない。
歯ぐきから血が出やすいし、口の中がネバネバする。
妊娠中はどうしても口腔内のトラブルが増えてくる。いろいろな原因がある。まず食生活の変化(回数、量、嗜好など)。唾液は酸性に傾き、分泌量、粘調度が変化。女性ホルモンが増加することによって、歯肉が充血する。免疫系の変化で、感染防御能が低下するため、感染症にかかりやすくなる。副甲状腺の機能亢進で、腎臓でのカルシウム代謝が増加する。
妊娠中の歯科医療が重要な理由がもう1つある。それは「母乳は虫歯になりやすい」という偏見である。1歳児検診や1歳6か月健診で「歯のために、母乳はお誕生日頃を目安にやめましょう」と勧められているが、これは誤り。
自然にケアしていれば大丈夫なのである。そこで産科医と歯科医の連携が大事になってくる。
①虫歯、妊娠性歯肉炎の予防をする
②重い歯周病は、早産の危険性を高くする
③胎児の歯の質は、お母さんの健康状態に左右される、
などの点で妊娠中の正しい指導が家族の健康につながっている。そして妊娠中こそ健康を考えるいいチャンスなのである。自分の体の変化に敏感になっているし、赤ちゃんに対しても留意する。食事について再考するいい機会だし、健康に関する正しい知識を身につけやすい。そのために日記をつける習慣をぜひつけてほしい。家族の絆を再認識するためにもいいことである。
最後に医療現場の現状と問題点をあげておこう。
①妊婦の口腔ケアの重要性が啓蒙されていない
②産科医・歯科医の認識も十分でないし、連携する機会もない
③指導しようとしても、未受診妊婦が結構存在する④産科医療が危機に直面していて、いわゆる「お産難民」がでている。
(寿)