独協医科大学
呼吸器・アレルギー内科教授
石井 芳樹氏


(社)日本呼吸器疾患研究基金とファイザー社共催のイベントで、独協医科大学の呼吸器・アレルギー内科の石井芳樹教授が講演した。演題は「COPDとはどんな病気?」。

 

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 COPDとは、慢性閉塞性肺疾患のことである。Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字を並べたものである。喫煙が原因で、お餅を焼くとプーッとふくれて空洞ができるように肺気腫となる場合と、気管が詰まって慢性気管支炎になる場合があり、いずれも結果は呼吸困難となる。最初は誰もが健常者である。喫煙によって軽症患者となり、咳と痰が出るようになり、動作時に息切れがし、在宅酸素療法が必要となる、というように重症へと進み、死にいたる。20年〜40年とゆっくりと進行する病気である。

世界の死亡原因ランキングをみると、1990年に第6位だったものが2020年には第3位になると予測されている。厚生労働省の05年の統計では、COPDの有病率は40歳以上の人口のヤク8・5%、全国で530万人の患者が存在している。しかし治療を受けている人はわずか22・3万人でしかない。


COPDの診断は

 

①タバコを吸っている、または吸っていた


②咳や痰が持続する


③階段をのぼると息切れがする、


などの状態の人に病院で受診して、呼吸器の検査をすすめることとなる。

 

 1秒間の呼気量で、肺機能を測定することができる。そして肺機能の定価の度合いで肺年齢、つまり肺がどのくらい老化しているかの指標が判明する。タバコ、大気汚染、薪などの煙、さらにはタバコの副流煙で肺の老化は進む。最悪の場合は肺がんになる。呼吸機能の検査で、肺年齢が実際の年齢よりも老化していたら、COPDなどの病気の可能性が高いので、なるべく早く精密検査を行う必要がある。


 喫煙による肺機能の低下状況をみると、吸わない人はもちろん、途中で禁煙した人の低下の状況はゆるやかになっている。25歳時の1秒量を100とした場合、非喫煙者は80歳で68だが、喫煙者は70歳で10未満である。45歳で禁煙した人は75歳で48、65歳で禁煙した人は75歳で10未満と、いずれも肺機能低下の速度が遅くなっている。COPDの治療は「まずは禁煙」ということである。そこで医師と二人三脚で薬物療法に取り組むことが大事なってくる。


①症状が改善し生活の質が向上する


②急激な悪化を防ぎ、入院回数を減らすことができる


③早期の薬物療法は、進行を抑制できる——という明るい展望を持てるようになる。

 

 禁煙を効率よく成功させるための禁煙補助療法がある。ニコチンガム、ニコチンパッチのほか、より効果の高い飲み薬(チャンピックス)もある。いずれも健康保険が適応できる。(寿)