写真(右から)
ノバルティスファーマ 二之宮義泰代表取締役社長
ノバルティスファーマ(スイス) デビッド・エプスタイン社長
ノバルティスファーマ(スイス) エリック・コルヌートチーフコマーシャルオフィサー
ノバルティスホールディングジャパン 石川裕子代表取締役社長
ノバルティスファーマは10月3日の夜7〜9時、東京・ベルサール八重洲でディオバン問題に関する記者会見を開いた。100名ちかい報道陣を前にスイス本社のデビッド・エプスタイン社長が、ディオバン問題を謝罪。「患者や医療関係者に多大な心配と迷惑をかけるとともに、臨床研究の信頼性を著しく損なった」などと述べ、再発防止委員会の設置を説明した。記者からは、データ改竄への関与や利益相反問題に対して質問が集中したが、不正疑惑を招いた具体的な過程については回答がなかった。主な質疑応答は以下のとおり。
■データ改竄の疑いについて
——ノバルティスはデータ改竄に関与していないのか?
エプスタイン 4ヵ月にわたり外部の立場の方が調査を行った。その結果、データ操作が行われた証拠は見つからなかった。厚労省の検討委員会(高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会)でも誰が何のために行ったか明確ではないということだった。当社としてはデータへのアクセスを持っていないので、事態を承知することは難しい。データを見ることも可能ではない。
——厚労省の中間報告書で、元社員一個人の関与というよりも、実態としてノバルティスとして関与していたと判断すべきと記載されている。この指摘に対するスイス本社の見解を求めたい。
エプスタイン この問題を過少評価しようという意図はまったくない。私自身も患者の立場として、患者の気持ちをよくわかるつもりだ。どんな薬を投与されるのか、どのような治療を受けることができるのか、どれだけ心配になるものか理解しているつもりだ。
エプスタイン・ノバルティスファーマ(スイス)社長
■誇大広告の疑いについて
——検討委員会の中間報告では、薬事法66条の誇大広告に該当するかが問題になっている。誇大広告にあたるか社内調査はどの程度把握しているのか?
エプスタイン この点に関しては時期尚早だと考える。調査をしている方がいるので、その方々の回答、提言を待ちたいと考えている。
■論文への疑問について
——「JIKEI」試験や「KYOTO」試験は、論文が出たとき論争になり、ランセットなどでも評論があった。学術誌にそのようなことが掲載されたときに、この研究はどこかおかしいという黄色信号とは思わなかったのか?
エプスタイン 臨床試験の結果が掲載された際には、人によって解釈、そこから導き出す結論に違いが出ることは珍しいことではない。だからこそ学術誌については、論争を許容している。しかし、振り返ってみると、言ったとおりだと思う。より留意すべきだった。しかし、それ以上に重要なことは、適切なコントロールの体制を敷くことだ。そういう形でデータを公表していかなければならない。またデータを公表する場合は、正確であることが重要で、関与した研究者に関しては論文で開示し、企業との関係についても開示をすることが重要だ。
■利益相反に関する二重基準の疑いについて
——検討委員会の中間報告で、利益相反の基準について、スイス本社では04年頃にはできていたとの指摘がある。しかし、日本ではそれができていなかった。海外と日本で利益相反のダブルスタンダードがあったのではないか?
エプスタイン (利益相反の)スタンダードについては、すべての国に同じように適用していた。全世界どこでも、最高品質の形で試験を実施していた。残念ながら、今回は日本で行われた臨床研究に関し、そのスタンダードがきちんと適用されていたかについて、十分なコントロールが発揮されていなかった。今回はそれをコントロールしているので、二度と起こらない。
——ノバルティスホールディングスの石川社長は、古くからノバルティスの取締役を務めており、海外で利益相反の基準があることを知っていたのではないか?
エプスタイン 石川に関しては、医師主導臨床研究に関して利益相反があるかもしれないと承知する役割には、そのときについていなかった。まったく違う職務を担当していた。今回、非常に重要なポジションに昇進したのは、ほんの数ヶ月前のことだ。
石川 現在、HDの代表を務めている。この件に関して改めて本当にご迷惑、心配をかけたことをお詫びする。私はこれまで長く人事の責任者を務めてきた。この社員の教育が本当に十分でなかったと重く受け止めている。今まで社内全体で倫理感を高める努力をしてきたが、力が及ばなかったことは大変申し訳なく思っている。今後はグループ全体、ガバナンスの強化とコンプライアンスの強化に全力をあげていきたい。
石川・ノバルティスホールディングジャパン社長
■奨学寄付金について
——今後も奨学寄付金の提供は続けるのか?
エプスタイン 奨学寄付金については、完全に内容を見直した。これまでと同じ形で拠出することはない。今回、ベストインクラスのガイドラインを策定する一環として見直した。(寄付は)一般的に増えていくよりか、減っていくと思う。
——2億円、3億円の奨学寄付金が慈恵医大や京都府立医大にされている。寄付の決定プロセスはどうだったのか。誰が決めたのか、社内での意思決定過程が明らかになっていない。
エプスタイン その当時、明確な意思決定の手順が存在しなかった。従って明確でない。明確なガイドラインが存在していなかった。どの立場のものが承認のサインをするのか明確になっていなかった。他の国、地域でしている手順が行われていなかった。
二宮 いろいろ社内でも調べたが、明確なプロセスが確立してなかった。もう一度すべて見直して、ほぼ完成したもの(システム)がある。奨学寄付金に関しては、このシステムを使って医師主導研究をサポートするということは、まずやめる。奨学寄付金ではない、委託型、契約型の臨床研究ということに移行することを決めた。それから奨学寄付金の申請についても、営業とかマーケティングの者が起案するということが過去にあったが、これをすべてメディカルの中で支払うという仕組みに変えた。奨学寄付金の金額が大きいと過ちが起きる可能性があるので、上限を設けて奨学寄付金で非常に大きな寄付が行われない仕組みにもした。
二之宮・ノバルティスファーマ社長
■再発防止策について
——再発防止委員会について
エプスタイン 再発防止委員会については、(委員を)7、8、9名程度を想定している。半分は社外の人材を考えている。専門分野については医療、医学、法務、倫理などの分野を想定している。再発防止委員会を設置することによって、二宮、コルヌートに対して助言を提供することになる。世界クラスのスタンダードを確実にこちらで実施し、最先端、最新の手順であることを確保してもらう。当社のトップと連絡ができる立場に置かれるので、この委員会による提言にはきちんと従う。
■ARBとACEの比較について
——社長は冒頭03年公表の「VALIANT」試験を引き合いにACE阻害剤とARBの効果はまったく同じと話した。しかし、その後、BPLTTCが大規模なメタ解析で、脳卒中や心不全の抑制効果は同じでも心筋梗塞の抑制効果はACEにあってARBにはないと結論付けた。日本でも日本循環器学会がガイドラインに取り込んでいる。ARBとACEの効果を同じというのはいかがなものか。
エプスタイン 私の回答についてお気に召さないことを承知の上で、敢えて回答する。いまの意見を深く尊重したうえで、異なる意見であることを申し上げざるを得ない。非常に多くの証拠が存在しているが、ACEに比べてARBの方が優れているということが、すべての文献を読んでもらえば同意していただけると思う。ほとんどの国では、日本も含めて標準治療はARBになっている。逆にいくつの国においてACEの方が使用されているのが多い国があるとすれば、それは先にそちらがジュネリック化したことにある。節減効果を考えている国では、最先端の最も効果が高いものではない治療から始める。人によって意見は異なる。薬に関しても、異なるクラスのものが存在すると考える。
——いろんな考え方があるかと思うが、日本循環器学会の先生方は、BPLTTCの解析を元に、心筋梗塞に関してはARBよりもACEの方が勝ると、心筋梗塞二次予防GLの11年改訂版に記載した。社長の立場は、日循のGLに賛成しないということになってしまうが。それでよいのか?
エプスタイン みなさんの意見や、日本のガイドラインについても尊重している。しかしガイドラインは、ガイドラインと呼ばれている通り、ガイドラインでしかない。必ずしも事実ではない。複数の医師、有識者等が集まり意見を集めたうえで、最善の合意、コンセンサスを形成した内容と承知している。日本の専門を複数集めた場合には、それぞれ異なる意見が出てくるかと思う。臨床試験は世界各地で行われている。その結果、他の降圧作用を持った治療に比べて、死亡率、罹患率ともに便益があることが実証されている。しかし、薬理、効能についての話をするのなら、記者の方とこのような話をするのではなく、しかるべく先生を呼ぶ必要がある。
■業績への影響について
——今回の不祥事がグローバルにどのように影響があるのか?
エプスタイン 名声、評判等については、当社にとって極めて重要なことだ。新薬を開発し、みなさんに提供するという使命に関しては、患者、医師、社会全体の信頼を得なければ、実施することさえ可能ではない。したがって一つのマーケットで起こってしまったことについては、全世界で痛みを伴い深刻にその影響を感じている。みなさんからの信頼回復に最大限の努力をしていく。
若干、売上げはこの影響で減少しているが、当社でもともと扱っている製品の幅が広いことを考えると、そのポートフォリトに占める割合は、それほど大きなものではない。従って、それほど有意な影響とはならない。私どもが心配しているのは、売上げの影響よりも評判だ。