シンクロナイズドスイミングのように、すらりと伸びあがった2本の素足と「飲む、足のむくみ改善薬」というコピーが印象的なポップ。第1類医薬品が並ぶ棚のなかでひときわ目をひく赤いパッケージ。「日本初」の内服による足のむくみ改善薬であり、ダイレクトOTC医薬品のアンチスタックスである。ダイレクトOTC医薬品とは、新規有効成分が医療用医薬品としての承認を経ることなくOTC医薬品として直接承認された医薬品のこと。また、同薬は2007年3月に厚生労働省の通知により西洋ハーブを有効成分とする医薬品承認申請のルールが定められて以来、初めて承認された西洋ハーブ医薬品でもある。有効成分は赤ブドウ葉乾燥エキス混合物だ。

 国内におけるいくつもの「はじめて」というハードルをいくつも超えて、今年6月に発売されたアンチスタックス。発売に至るまでにはどのような課題があったのだろうか。

 開発にあたったエスエス製薬研究開発本部の澤村淳氏に話を伺った。

足のむくみの自覚症状に対する改善率は81%

 エスエス製薬が全国の20〜50代の女性10000人を対象に行った調査によると、50.8%と約半数の女性が足のむくみを経験していることが明らかになった。そのうち、過去1年の間で足のむくみを感じた1000人に対して、足の重さやだるさへの対策について調査を行ったところ、セルフマッサージをしたり、足を軽く動かして運動をしたりと何らかのケアをしている人は多く見受けられたものの、これらの対策への満足度は40%程度に留まるという結果が得られた。つらい症状に対して、さまざまな対策を講じてみるものの、満足のいく対応策をもっている女性はまだ少ないことが浮き彫りとなった。そこで、有効な対策のひとつとなり得るのがアンチスタックスだ。

 「足のむくみは、血管から血漿成分である血液中の水分が漏れ出して、皮膚の下に余分な水分がたまった状態です。アンチスタックスは、血管を強化することでその水分が血管外に漏れ出るのを防ぎ、血流を促進させる働きをします。

 1日1回2カプセルを12週間服用した継続服用による国内の臨床試験では、足のむくみを伴う自覚症状の全般改善度の改善率は81%にのぼりました」

 有効成分の原材料の赤ブドウ葉エキスはヨーロッパで古くから血管の病に良いとされてきた。有効成分がハーブだというと、サプリメントのように思う方がいるかもしれないが、サプリメントとは全く異なる。ヨーロッパにおいて、医薬品とされる西洋ハーブは欧州医薬品庁により基原植物、有効性、品質管理、製造プロセスなどが規定された生薬製剤のことをさしていて、主に一般用医薬品として販売されている。一般消費者もその有効性を認知しており、セルフメディケーションに取り入れている。本邦においても、サプリメントは食品に分類されているのに対し、アンチスタックスは薬事法において医薬品に分類されており、ヨーロッパと同様にむくみの症状に対する有効性が確保されているのはもちろんのこと、安全性、品質も保証されている。これが、サプリメントとは異なり、医薬品に分類された西洋ハーブ医薬品なのだ。

新たな分野に切り込む先駆者としての苦労と喜び

 発売開始から間もなく半年が経過する。開発当初、日本でつらい足のむくみに悩む人たちのために新たな選択肢を…と考え、準備を開始した澤村氏だが、発売までにはさまざまな問題にぶつかってきたという。

「アンチスタックスはもともとヨーロッパで販売されていた医薬品ですが、日本で販売するにあたっては、新たに湿気に対する対策が必要になりました。ヨーロッパで販売しているカプセル剤のままでは、カプセルの耐久性が確保できなかったのです。そこで、カプセルを変更するとともに、さらなる湿気対策として、小包装にしてから箱に詰めるという工夫をしました」

 また、日本初の西洋ハーブ医薬品かつダイレクトOTC医薬品ということもあり、申請のためのデータを揃えることも、従来のOTC医薬品と違った手順が必要でチャレンジングであったようだ。

「日本において初めて、西洋ハーブ医薬品とダイレクトOTC医薬品の市場を切り開くパイオニアならではの生みの苦しみがあったように思います」

 そう当時を振り返る。

 いくつものハードルを乗り越え、10年以上の歳月を経て、今年6月にようやくアンチスタックスを世の中に送り出すことに成功した澤村氏にとって、もっともやりがいを感じるのはどのようなときなのだろうか。

「弊社のお客様相談室には“症状が楽になった”“飲み始めて早い段階から効果を実感できた”という声が寄せられており、足のむくみに悩まされてきていた方たちのお役に立てているという実感をかみしめています。お客様の中には“ありがとう”と言ってくださる方もいて、この言葉を頂いたときには、じんわりと喜びが体中に染み込んできました。これまでの苦労が報われる瞬間です」

 これまで重症化するまでは放置されがちであり、病気という意識すら希薄だった足のむくみの初期治療というブルーオーシャンに乗り出したエスエス製薬。

「私たちが信じて駆け抜けてきた方向性は、これで良かったのだと実感し、嬉しく思うのと同時に、西洋ハーブやダイレクトOTC医薬品を日本で初めて市場に送り出した先駆者としての責任も感じており、これからもその責任を果たし続けていきます」

 日常生活で私たちを悩ませてきた足のむくみの領域に新たな風を送り込んだアンチスタックス。本邦におけるセルフメディケーションに西洋ハーブという新たな選択肢をもたらし、内服による治療が出来なかった初期段階での治療を可能にしたが、まだ一般消費者や医療従事者の認知度は高いとはいえず、引き続き適正使用を含めた情報提供が必要だ。ただ、さまざまなハードルを乗り越えて世に出たアンチスタックスが、西洋ハーブ医薬品、ダイレクトOTC医薬品という新たな領域における治療の可能性を切り開くパイオニアとなるのは間違いない。(育)


アンチスタックス
第1類医薬品
希望小売価格:40カプセル 3,045円 / 60カプセル 4,095円(税込み)
製造販売元エスエス製薬株式会社