今期の調剤報酬改定は、これまでにも増してジェネリックの使用促進を目指す国の意向が色濃く出たものとなった。


 調剤報酬は、おもに


①調剤技術料
②薬学管理料
③薬剤料


 の3つで構成されており、薬局の施設基準に応じた加算もある。「後発医薬品調剤体制加算」は①の調剤基本料への加算だ。施設基準を届け出る直近3カ月間に調剤した医薬品のなかで、ジェネリックの割合が多いほど、薬局は高い点数が加算できる。それが今回の改定では、厚労省の薬剤管理官が「甘い数字ではない」と言い切るほど厳しい内容が示されたのだ。


 これまで、調剤数量のうち後発医薬品の割合は、22%以上、30%以上、35%以上の3段階に分けられており、処方せんの受付1回につき、それぞれが5点、15点、19点が加算できた。ところが、今回は後発医薬品割合が55%以上、65%以上の2段階に絞られた。加算点数は、それぞれ18点、22点と高い報酬が得られるようになるが、55%未満の薬局はなんの加算もつかなくなる。


 昨年5月に示された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」から、数量シェアの計測方法が変更されたため、単純には比較できないものの、厳しい数字であることには変わりない。お飾り程度にジェネリックを置いている薬局は、調剤報酬が目減りしていくのは確実だ。


 締め付けが厳しくなるのは、何も調剤薬局だけではない。ジェネリック医薬品メーカーにも、その影は忍び寄っている。


 医師や薬剤師が、患者に後発医薬品を勧めにくい大きな理由が「ジェネリックは供給が安定していないから」というもの。たしかに、継続的に薬を服用する慢性疾患などの患者が受診した場合に、「メーカーさんからお薬が入らないので、お薬が変わります」とは言いにくい。患者は「なぜ、そんな薬を処方したんだ」といぶかしく思うからだ。


 厚労省からの指導もあり、ジェネリック医薬品も納品までの時間は短縮され、在庫の確保も行われるようにはなった。しかし、日本ジェネリック製薬協会の調査では、2012年度は14社のメーカーで21件もの品切れ品目が発生していた。


 そのため、「ロードマップ」でも、ジェネリックの使用割合を高めるための具体的な取り組みとして、「安定供給」が真っ先にあげられている。2015年度中に品切れ品目をゼロにすることが明示されており、2014年度から医療機関や薬局にモニタリング調査が開始され、品切れ状態が把握されるようになる。そして、災害など特別な場合をのぞいて、既収載品目の安定供給に支障が生じたメーカーに対しては、原因究明や再発防止策を確認した上で、改善が認められない場合は新規の薬価収載希望書を受け付けないといったペナルティが科せられる。メーカーには、これまで以上の対応が求められるようになるだろう。


 薬価そのものも、4月以降、初収載の後発品は、先発品の6割(内服薬で10品目を超える場合は5割)まで引き下げられ、大きな痛手となる。


 売れ筋を手当たり次第に製造してみて、売れ切れたらそれまでというやり方は、今後は通用しない。生き残りをかけるなら、先発品を凌駕するような魅力ある商品開発が、後発品メーカーにも求められるようになる。


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早川 幸子(はやかわ ゆきこ)

 1968年千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。フリーライター。編集プロダクションを経て、99年に独立。これまでに女性週刊誌などに医療や節約の記事を、日本経済新聞に社会保障の記事を寄稿。現在、朝日新聞be土曜版で「お金のミカタ」、ダイヤモンド・オンラインで「知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴」を連載中。2008年から、ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんと「日本の医療を守る市民の会」を主宰している。