今週は週刊新潮に“惹きつけられる記事”が目立った。ひとつは、高木毅復興大臣追及の第3弾。例のパンツ泥棒の一件である。


 前々回、私は《こんなことで野党に「徹底追及」を求める気になれない》と本欄に綴った。国政の場で論じるには値しない話、という点では、今も同じ考えだが、週刊誌ネタとしては、やはりこの手の“くだらない話”は最高に面白い。そして当事者の人間性は、こういった話でこそ、生々しく見えてくる。


 第1報でパンツ泥棒被害者親族による証言をゲットした新潮は、続報で高木氏の地元・福井県敦賀市で初報の掲載号が買い占められ、店頭から消えた異常事態を報じた。そして、今回のタイトルは『閣下、嘘をついたらアウトです! 「高木パンツ大臣」の幼い危機管理』。一連のドタバタにあきれ返る周辺の人々から、漏れ聞こえる大臣のさらなる“顰蹙エピソード”を紹介したものだ。


 曰く、地元での国政報告会で演壇に立った氏は、ある道路事業を実現させた功績を鼻高々に語ったが、手柄を独り占めにしようとする態度に憤激したベテランの県議に「お前は何もしとらんやないか。嘘を言うな」と来賓席から噛みつかれたという。


 陳情で上京した地方議員や選挙活動を手伝った高校の同級生たちへの態度も横柄で、例えば、選挙運動においても選挙カーでの移動中、『あの人が“バナナ”とつぶやくから渡すと、食べ終えた後の皮を後ろの席へ投げ捨てる。誰かが座っていようとなかろうと……』というような“お殿様ぶり”なのだとか。


 また、大臣による“犯行”か否かは不明だが、地元では20年ほど前、女優・桜田淳子が暮らしていたマンションにパンツ泥棒が侵入した事件があり、最近になってその話題が再燃して、氏の疑惑との関連を疑う声も出て来ているらしい。


 パンツ泥疑惑が事実だとしても、若き日の過ちなのだから、潔く認めればそれだけの話だ。本当に事実無根なら徹底的に戦えばいい。中途半端な“火消し”はむしろ逆効果で、いつまでもゴシップネタになるだけだ。


 そしてこの「パンツ大臣問題」よりさらにインパクトがあったのは、維新の党分裂をめぐる同じ号の特集。『「維新」醜態の元凶は「橋下大阪市長」を操るわがままな黒幕』という内幕記事である。


 あの自由気ままな橋下氏を「操れる黒幕」など本当にいるのか。そんな素朴な疑問も浮かぶのだが、記事によれば、その人物こそ、府知事の松井一郎氏だという。記事によれば橋下氏は、弁護士だった自分の政治キャリアを支えた松井氏に恩義を感じていて、今回の分裂騒動も当初は何とか収めようとしていたが、松井氏ら大阪組に突きあげられ、忸怩たる思いで「悪役を引き受け」るようになったのだという。


 府知事選・市長選の大阪ダブル選挙は11月22日。先の住民投票に敗れ、潔く政界引退を表明したはずの橋下氏だったが、最近はその言葉の信憑性も揺らぎ始め、かつての“同志”らと有権者不在の泥仕合を繰り広げている。熱烈な大阪のファンは、こんな状態でもしらけた気分にはならないのだろうか。よそ者にはわかりにくい感覚である。

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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」(ともに東海教育研究所刊)など。