やはり週刊誌報道の華は芸能ニュースなのだと改めて感じた。SMAPの分裂騒動である。13日付で日刊スポーツとサンスポが第1報を放ち、翌日には一般紙までもが大きく騒動を報じた。しかし、14日発売の新潮記事『4対1に分裂!「SMAP」解散への全内幕』を読み込むと、同誌が相当深く先行取材をしてきたことがわかる。おそらく、新潮の動きがスポーツ紙に伝わり、騒ぎに火が点いた、という顛末のようである。


 内容は改めて触れるまでもない。SMAPの育ての親である女性マネージャーがメリー喜多川副社長と対立、ジャニーズ事務所を追われる形となり、メンバーの4人がマネージャーに従う構えを見せ、木村拓哉だけが事務所残留の意思を示している、という話だ。


 思い起こすのはちょうど1年前、文春がメリー副社長の単独インタビューに成功し、事務所内の派閥対立を質した記事のことだ。このとき、副社長は社外にいた女性マネージャーを急遽呼びつけ、「対立するならSMAPを連れて行っても、今日から出ていってもらう」と記者の前で面罵したのだった。


 あの時、筆者はこの“女帝”の豪快な取材対応に感嘆し、思わず本欄で「あっぱれ」と書いてしまったが、ジャニーズのこういった対応は特例中の特例で、普段は所属アイドルのゴシップめいた報道は、一切許さない強圧的な姿勢で知られている。


 とくにワイドショーにとって、ジャニーズアイドルはアンタッチャブルな存在だ。今回も一報のあと、テレ朝の情報番組に草薙剛が生出演したにもかかわらず、この問題には誰も言及せず、不自然極まりない雰囲気だったという。


 メディア統制で悪名高い事務所はジャニーズだけではない。一方、そこまでの力がない、と言ってしまえばそれまでだが、比較的誠実な対応を見せたのが、今回のベッキー騒動でのサンミュージックだった。この事務所は酒井法子の薬物問題でも、社長自らがカメラの前に立ち、きちんと話していた記憶がある。


 ところが、今週のテレビ各局は、SMAP問題で見苦しいほど気を遣う一方、ベッキー問題では、会見で質問対応の時間を設けなかったことを容赦なく責め立てた。雑誌の世界にも「出版タブー」があり、作家・百田尚樹の「殉愛騒動」が記憶に新しいが、何というのだろう、ここまであからさまにメディアが舞台裏をさらけ出してしまうのは、最近の傾向のように思える。以前はもう少し、うまく取り繕っていた。


 強い相手の批判はしませんが何か? 当たり前でしょう? 今はもう、そんな開き直りさえ感じられるのである。政権批判に腰が引けた報道番組にも同様の苦々しさを覚えるが、「弱きをくじき、強きを助ける」風潮はもはや当然のように蔓延し、ただでさえ元気のないメディアの斜陽化を、自ら加速しているように思われてならない。


 ちなみにポストはSMAP問題の後追い記事の中で、ジャニーズ事務所の圧力で“独立派メンバー”の4人が窮地に追い込まれつつあるとして、《中居たち4人は人気を過信し、甘く見過ぎたのかもしれないが、いまや遅しである》とまで断じている。


 果たしてこの記事が本当に記者の分析によるものか、それとも“何らかの力”でそう書かされているのか。そんなところまで、疑わざるを得ないご時世が切ない。 
 
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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」(ともに東海教育研究所刊)など。