病原体の感染から体を守ったり、健康の維持や老化・病気の予防に活躍する「免疫」。


 医療・医薬の世界では、今も昔も免疫の話題に事欠かない。近年、抗体医薬はすっかり“売れ筋”として定着した。小野薬品のがん治療薬「オプジーボ」は画期的な「がん免疫療法」の薬として期待の星だ。


 いろんな薬の説明資料や取材を通して、付け焼刃程度の知識は身につけていたものの、免疫について、まとまった勉強はしたことはない。わかったつもりはよろしくない——。というわけで、まずは一見やさしそうな新書、『笑う免疫学』を手に取ってみた。


 著者は〈サナダムシを6代にわたり、16年間も自分のお腹の中に飼っていました〉という藤田紘一郎氏。「カイチュウ博士」といったほうが、通りがいいだろう。


 免疫のしくみについて、基本から解説。図解もふんだんに使われていて、難しいテーマの理解を助けてくれる。「T細胞」「B細胞」「マクロファージ」「NK(ナチュラルキラー)細胞」とか、この分野の調べものをしていると、ちょくちょく出くわす言葉だけど、全体像も含めてよくわかった。というか、今まできちんと理解していなかったことがわかった。反省。


■日本人のウンチは戦前の3分の1に


 近年、「腸と健康の関連性に着目した“腸本”が増えたなぁ(特に新書)」と気になっていたんだけど、「ちょっと胡散臭いんじゃ……」と思って手を付けていなかった。ただ、本書で〈免疫力にはいろいろな種類があり、一概には言えませんが、免疫力の約70%が腸でつくられ、あとの30%は心、とくに自律神経が関与している〉と知って、“読まず嫌い”はよくないと、また反省。腸は免疫力のカギを握る臓器なのだ。ちなみに、藤田氏も『腸内革命』ほか、多数の腸本を上梓している。


 食べ物やストレス、笑いと免疫の関係を扱った章は、日ごろの生活にも役立ちそうな情報だ(1日に1時間笑うと免疫力が高まるとか)。もちろん、アレルギーや自己免疫疾患、がんといった難しい病気と免疫の関係についても詳しく解説されている。


 冒頭に「一見やさしそう」と書いた。タイトルの『笑う免疫学』も、サブタイトルの「自分と他者を区別するふしぎなしくみ」も、初心者向けを匂わせる。装丁もポップな印象だ。しかし、そう楽に読める本ではないことを記しておこう。最近は軽ーい内容の新書が増えて、1.5〜2時間程度で読めるものも多いけど、本書は4時間くらいかかってしまった。新書のシリーズ名と違って、ぜんぜん「プリマー」(入門書)じゃない(笑)。


 まったく持って余談だけど、“オトコの子”はいくつになっても、ウンチの話題が好きだ(自分だけじゃないと確信している)。本書で多くのページを割いている腸と糞便は切っても切れないだけに、“ウン蓄”にも事欠かない。


〈現代人の糞便量は、戦前の約3分の1にまでに減少しているのです。/これは、腸内細菌のエサである野菜や糖類の摂取量も減っているからです〉〈ニューギニアのある部族の人たちは1日1キロくらいウンチをします。(中略)/便の量が多いということは、腸内細菌の死骸も多いことを意味します。つまり、それだけたくさんの腸内細菌が棲んでいるということです〉。


 少々難しいけれど、赤線ひきながら、たまに戻ったりしながら、それでも読み進めたくなる1冊。ウンウン唸りながら熟読してみてはいかがだろうか。(鎌)                                                                                                                                       

<書籍データ>

『笑う免疫学』

藤田紘一郎 著(ちくまプリマー新書 780円+税)