週刊文春の爆走が止まらない。今週は《育休国会議員宮崎謙介の“ゲス不倫”撮った》である。昨年末、同じ自民党に所属する女性衆議院議員と結婚し、育休取得をぶち上げた“イクメン若手議員”宮崎氏が、あろうことか出産を目前にした妻が入院する中で、グラビアタレントを自宅に引き入れていた──。各局のワイドショーは、文春WEBのインタビュー映像まで使って、このスクープを後追いした。


 知り合いの編集部員によれば、怒涛の勢いでスクープを連発する編集長の「強運」に、社内でも驚きの声が上がっているという。昨年秋、グラビアへの「春画掲載」を咎められ、会社から3ヵ月の「謹慎」を命じられたこの編集長、謹慎明けに雪辱を果たさんと、特ダネをせっせと貯め込んでいたのではないか。ぼんやりと、筆者はそんな想像もしていたが、どうやら違うらしい。


 実際、長期取材が実を結んだ甘利明・前経産大臣のスクープを除けば、ベッキーの不倫スキャンダルも、今回の宮崎議員の一件も、ここに来て火を噴いた真新しい騒動である。情報というものは、集まる時には集まって来るものなのだ。


 ただ別の関係者からは、ここまでスキャンダル路線で突出してしまうと、通常の取材がやりにくくて仕方がない、とこぼす声も聞かれる。文春からの取材申し込みがあれば、確かにこのご時世、「いったい何事か」と身構える人が多いだろう。


 実際、今週号の《被害額56億円 ホリエモンが“宇宙詐欺”に引っかかった!》という記事によれば、堀江貴文氏がアメリカで起こしている裁判について文春記者が取材を試みたところ、堀江氏は即座に電話を切り、ツイッターで「週刊文春のクソ記者から突然電話がきた」「下劣」「虫唾が走る」と嫌悪を露わにしたという。


 何にしても、これほどに有名人に嫌われ、怖がられる誌面作りをしている、という点では、文春は大したものである。


 清原和博氏の覚醒剤逮捕に関連して(思えばこの話も2年前、文春のスクープから始まったものだった)、今週の週刊新潮には、「清原の長年の“薬物仲間”」という匿名の人物の証言で、《本人が語った「初体験」と「悪い仲間」と「長渕剛の裏切り」》という記事が6話で構成する特集の1本として収められていた。


 記事によれば、長淵氏は清原氏の“覚醒剤仲間”だったが、疑惑の表面化に慌てた清原氏から「どうしたらいい」と相談を受け、冷淡にも「もうかかわらないでくれ」「電話もかけないでくれ」と縁を切ったという。実名でここまで書く以上、それなりに自信はあるはずだが、それにしては、スクープかどうかも定かでない、あいまいな書き方の記事だった。


 それから先週、見落としてしまっていたのだが、作家の川上未映子さんが新潮のコラムで同じ新潮の巻末にある元産経記者・高山正之氏の“名物コラム”をバッサリと斬っていた。「帝王切開で産まれた子は人格的におかしくなるという説がある」「現に帝王切開率が高いブラジルは少年犯罪が多い」「そのブラジルを“支邦”が抜き、次世代の半分以上が『母の愛に飢えた人格障害者』になりそうだ」という、あまりの妄言に眩暈がした、という話だ。


 正直、高山氏の“名物コラム”は毎度、この調子だ。私自身、氏の類まれな“想像力”によって、著作をボロクソにけなされたことがある。あるルポルタージュで取り上げた人物を、腹黒いウソツキだ、と頭から否定されたのだ。もちろん氏は何の取材もせず、根拠も提示しない。思い込みがすべてである。


 すでに高齢であられること、こんな文章を毎週書く人と議論が成り立つとは思えないこと、そんな理由で私は、無視を決め込んだが、川上さんは違った。真似をする気にはなれないが、その姿勢は立派だと思う。
 
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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って」(ともに東海教育研究所刊)など。